北京の億ションが、そう羨ましくもない事情

 

 知人に中国大陸に日系大手会社から派遣され、駐在員事務所の代表をしていた人がいる。

 

 知り合った時には彼はすでに定年し、日本と中国は北京にある家を往復して暮らしているとのことであった。北京で彼の購入したマンションは、北京市の中央よりと呼べる三環路の中に位置する高層マンションであったが、そこに不動産を所有する還暦を超えた彼を素直に羨ましいとは思えないのが、北京の過酷な毒霧の存在である。

 

 よく知られるように、中国の環境汚染は酷い。どれほど酷い環境汚染なのかは「当局が隠してしまいたいぐらいに酷い」というレベルだ。

 

 

 

 かつて、中国の空気汚染が深刻だということは感じられてはいたが、実際にどれほど悪いのかは発表されていなかった。いや、それまで当局から発表されていた数値が出鱈目であったというのが正しい。

 

 数年前より、在中アメリカ大使館・領事館が独自に測定した空気汚染の数値が中国の人民を賑わすこととなる。というのも、それまで当局が発表していた数値よりも、ずっと深刻な空気汚染が日々発生していることを在中アメリカ大使館・領事館の数値はさらけ出してしまったのである。

 

 それからしばらくして、中国当局の空気汚染指数も「PM.5などの指標も足しました」ということで、若干は在中アメリカ大使館・領事館の発表する数値に近づきはしたが、それでも平均して中国当局の発表するすれは、アメリカ側が発表するそれよりも低い汚染値を示すことが常であった。

 

 そして、つい数ヶ月前には、在北京アメリカ大使館の発表する「空気汚染指数」は、なんと中国当局により封鎖されてしまった。なんでも、「中国の公式な空気汚染指数を発表するのは、中国当局の仕事であり、在中アメリカ大使館が発表する類のものでなないので、人民に偏見を持たせるような情報は規制する。」という有難いご指摘・ご指導のもとにそうなったらしい。日本語や英語にすると、「不都合な事実の隠蔽」である。

 

 

 「買った頃よりもずっと値上がりしていてね、今では億ションですよ。うしし」という元駐在員事務所代表の知人のいうことに、素直に「いいですね」と思えなかったのは、「それって毒霧の中の小さな部屋ですよね」という考えがすぐに去来したからに他ならない。

 

 密かに、彼の自慢の億ションが値崩れしないうちに、それを売り抜けられることを祈っている。

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習近平、かなり経済音痴のよう