モスクワに「日本の空気」を瞬間的に作り出した日航CAの話

 モスクワのドモジェドヴォ国際空港から日本へと帰国する折、日本航空の便に搭乗した。ターミナルにはお酒やタバコを扱う免税店、軽食を食べさせるカフェなどが幾つか入っているが、ロシアの「おもてなし」の心は中国大陸のそれよりはまだましなものの、やはり総じて手触りの粗い感が否めない。

 

 複数ある免税店を覗き比べてみても、扱っている商品はほぼ同じであり、ルーブル安で売値を仕入値が下回ることを恐れたオーナーたちは、「ドルやユーロで値付けする」という措置でルーブル安の損失を回避しようとしている。そして、モスクワ市内と比べると2倍以上はする売値に、搭乗待ちの乗客たちは「ただの水で2ユーロか、市内の3倍以上だ」と肩を落とすのであった。

 

 

 搭乗予定時間の一時間ほど前に、日本航空のCAたちが日航機の待つターミナル・ゲートに姿を表す。6人ばかりのCAは、日本でいうと中肉中背ではあるが、ロシアでは小柄な部類に属する。年齢は20台後半から40台といったところ。若く輝いているだけが取り柄のアジアの格安航空会社(LCC)のCAたちとは、活力の面では比べようもない。(無論、機内の心憎いまでの気の利いたサービスはJALが勝る)

 

 しかし、日本航空のCAたちは、「おもてなし」の心をここで見せてくれた。乗客の数に対して全く数の足らない待合ゲートの椅子取りゲームに疲れつつある乗客の群れに対し、機内に乗り込み準備をする前に、6人のCAは掛け声などをかけることもなく、ほぼ同時に「お辞儀」をしてみせたのである。

 

 もちろん、「お辞儀」をすることは無料である。かつての日本のマクドナルドで「スマイル無料」のサービスがあったように。しかし、そんな些細な「おもてなしの心配り」が、日航機の留まるゲート前の空気を瞬間的に変えることに成功した。多くの日本人に混じってロシア人の待合客たちは、その「お辞儀」にしびれた人が少なからずいた。小学生高学年ぐらいのロシア人の女の子は、その「お辞儀」するパフォーマンスに、文字通り小躍りして喜んでいた。その「お辞儀」は武道家や歌舞伎・能役者のように洗練されたものではなかったが、それでも「日本の空気」をロシアのモスクワに再現するには十分に効果的な所作であったのだ。

 

 日本には、同じ日本人である政府や役人が作り出したGDPの2倍以上にもなる借金がある。お金をかけてハード・コンテンツを作り出す財政的な余裕は、残念ながらあまりない。しかし、「お辞儀」など日本伝統の文化、ソフト・コンテンツの継承と伝達によって、世界の人々を魅了することも可能である、そんな可能性を垣間見させてくれた「お辞儀」であった。

 

本日もご覧いただき、ありがとうございました。

ブログ・ランキングのバナーをクリックしていただけると励みになります!

 

JALのCAさんの機内アナウンスの間合いは完璧でした。クリック!

ブログランキング・にほんブログ村へ