中国のインターネット環境:WWWではなくNWWへ

 世界のネットワーク同士をつなぐインターネットが世に現れてから数十年のうちに、インターネットを介して情報をやり取りすることになった業務は多くある。人々の仕事の仕方を変え、世界の情報の流れを加速させたこの潮流は、今後もデジタル方式で置き換えられる世界中の業務をネットワーク内で統合させていくことになるだろう。

 

 かつて、一部の例外を除いて、「仕事」といえば人々はオフィスに通って業務をすることを想像した。しかし、今日ではオフィスに通うことなく仕事をする「ネットワーク・ベースの業務スタイル」が広がりつつあり、「自律的に働ける人」からそうした業務スタイルになりつつある。

 

 こうした「ネットワーク・ベースの業務スタイル」には、「安定的なネットワークに接続できる」ことがまず大前提となるが、その観点からすると「中国のインターネット」は非常に脆弱な環境であると言える。

 

 

 

 「国家のため」という名目のもと、実のところ「体制を守るため」という目的のために多くのネットワーク上のサービスが中国大陸では利用することができず、発足当時は中国でもアクセスできたウェブ・サービスや情報が、当局の恣意的な判断によって急に接続を断たれることは日常茶飯である。

 

 また、軍部に属すると言われるネットワーク上の公安部隊は、日々中国内の情報のやり取りを監視しており、「社会に対してインパクトのある人」ともなれば、その情報通信の内容は、ほぼ丸裸にされて検閲されていると見るべきである。

 

 中国大陸では、VPNなどを使って必要な諸外国の情報にアクセスすることが必要となるが、そのVPNも万能ではなく、多くの場合、ネットワークに接続できなかったり、できてもすぐに接続が途切れるといった不具合が多発する。こうした環境下では「ネットワークに繋がることの負荷が高すぎ、ネットワーク上で本来する予定の業務をするだけの気力も体力も消耗してしまう」という悪循環に陥る。知的な生産をネットワーク上でしようと試みる人々にとっては、「中国のインターネット」は、非常に「強固で厄介なボトルネックを抱えている」と言える。

 

本来、ウェブ上のURLにあるwwwとは、world wide web(世界規模での情報網)を表す略語であるが、中国のそれはnation wide webnww、国内限定の情報網)となってきており、またそのnation(国内)の範囲でさえ、情報の開示や送受信にたいする阻害が強固となりつつある。今日使えているサービスが、いつ断線するかわからないのだ。

 

 こうした「ネットワーク上の不便さ」による中国大陸の人民の被る不利益は、経済的にも大きな損失を被ることになっているのであるが、自称「人民への奉仕者」たる人々には、こうした環境を改善するつもりは毛頭ないようだ。むしろ、残念なことに「締め付けと情報操作を強固にしていこう」という趨勢であり、「ネットワークをより自由な環境にして、中国大陸の人民の生産性をあげることに寄与しよう」という方向には向かっていない。

 

 GoogleFACEBOOKTwitterDropboxYouTubeや各種ニュース・サイトなど、大手のサービスでも情報が遮断されているサイトは挙げればきりがない。表向きには別の適当な理由が発表されているが、これらはどれも「当局の検閲と意向を汲んでくれないサイトなので、体制への言論が統制できない」というのが最も大きな遮断理由であろう。言い換えると、「当局は他者の批判を各種メディアを通じてするが、他者が当局の批判をすることは許さない」ということである。つまり、「お前らの悪口はいうが、お前らは俺の悪口を言うな」という良識のない子供のような論理である。

 

 こうした環境で育った人々が、世界の人々と同じ感覚で物事を考えられるようになるのかどうか、大きな疑問が残る。多くの人々の人格形成に根深い悪影響があることも、「中国のインターネット」を管理する人々が産み出した「悪しき副産物」であろう。

 

中国のネットワーク管理は厳しくなるばかり