仕事人の座右の書:『イシューからはじめよ』

 

 毎年、多くのビジネス書が市場に出回るが、その大部分が人に知られることもなく世の中から消えていく。そうした本は消えうる運命を背負った「おまとめサイト的な内容」のものが殆どで、著者が「自分の頭と経験から考えたこと」でないものがほとんどだ。全くビジネスの経験のない人々には、「ビジネスの全体を俯瞰するための良い勉強」になりうるかもしれないが、30代40代ともなってくると、本を手にする時間と労力、そして幾ばくかの金の無駄でしかない。

 

 これまでに数百冊はビジネスに関連する書籍を読んできた。手にする前に「この本は読む価値があるだろうか」と斜め読みしたモノを含めると、数千冊は渉猟してきたとも言える。その中で、近年、圧倒的な存在感を放っていたビジネス書といえば、『イシューからはじめよ』である。

 

 

 

 著者は安宅和人さん。元マッキンゼー・ジャパンで働いていた経歴を持ち、アメリカの大学院で脳科学のドクターを取り、マッキンゼーに復職後は同社のトレーニング担当などを経て、ヤフー・ジャパンに移籍している。世の中に対して多くのインパクトを残してきた人であることが、この経歴からも察せられる。

 

 この本の要諦は、冒頭の100ページの間にある。つまり、「最小限の努力で最大限の結果を出すには、取り組むべき重要度が高く結果が出しうる対象(イシュー)に取り掛かるべきである」ということ。

 

 これは言葉にすると「ほんの数十文字の内容」であるが、これが「身にしみてわかる」というのは、多くの人にとって30代以降なのではないだろうか。20代でこれが「そうだそうだ」と分かる人は早熟であり、10代でこれが分かる場合には神がかっているとさえ言えるだろう。

 

 普段の業務に忙殺されていると、「何に着手するべきなのか」というイシューを選ぶことすら放棄し、「自分の得意なこと」を惰性で気付かぬうちに選んで取り組み、その「結果が出なくとも、取り組んでいることに満足してしまう」状態に人は陥りがちである。大きな組織では特にそうだ。

 

 そうした本末転倒な状態を防ぐための実践的な「考え」を説いたのがこの本であり、どこかで見たような欧米のビジネス書の「おまとめサイト」的な内容の本ではない。少なからず、元マッキンゼーの人々も「おまとめサイト」的な「マッキンゼー流のxx術」的な本を書いている人が多いが、この本はそうした「おまとめ本」とは一線を画するモノである。

 

 

 

 

 

 

イシューから始めよう