クエンティン・タランティーノ監督の最新作、「 ヘイトフル・エイト(The Hateful Eight)」をタイ王国はプーケットにて観た。日曜レイト・ショーの観客の半分が欧米人。187分という長編であり、かつ開拓時代(を意識した)アクセントの強い会話シーンの多い映画なので、それなりに英語に自信のある人でないと、会話の理解は難しい。

The Hateful Eight (2015)
R | 187 min | Crime, Drama, Mystery | 30 December 2015 (USA)
Director: Quentin Tarantino
Writer: Quentin Tarantino
Stars: Samuel L. Jackson, Kurt Russell, Jennifer Jason Leigh

「七人の侍」や「荒野の用心棒」といったマカロニ・ウエスタンの流れを組むようなタイトルではあるが、この映画はその枠組みを逸脱することに成功している。敢えて言えば、ウエスタン映画に「キル・ビル」の「狂ったエッセンス」を部分的に導入したという感じだろうか。うまく伝わらないだろうけれど。

映画の大部分を馬車の幌の中、山小屋の中、といった密室で展開するので、自ずと会話が主体となる。8人の癖のあるキャラクターたちが、クライマックスの地獄絵図へ向けて失踪する1日を描いているのだが、外の雪景色や山並みの美しい映像とは裏腹に、そこに映し出されているキャラクターたちはとことん癖のある人々。

この映画でクエンティン・タランティーノの監督作品は8本目となる。初期の作品である「レザボア・ドッグス」の冒頭シーン、ギャングがマドンナの「ライクアバージン」の歌詞の意味を論じ合っている会話が、ずっと続くようなトーンのマカロニ・ウエスタンは、かつて観たことがない。
女性に対するリスペクトの欠如、殺された息子を持つ父親に対する心理的な圧迫、爽やかさとは真逆を行くことで、タランティーノはこの作品を特別なウエスタン映画としている。
以下、いつもの25点評価。
<ヘイトフル・エイト(The Hateful Eight)>
Performance: 5
Visual: 5
Story: 4
Sound & Music: 4
Originality: 5
合計:25点満点で23点!
ストーリーと音楽を1点ずつ減点したのは、187分という長丁場を楽しませるリズム感がやや乏しかったのと、耳に残る音楽がなかったことが理由。

この映画は、どちらかというと若いカップルのデート向けの映画ではない。それなりに映画を観てきて、タランティーノの過去の作品も観ている人へ向けた作品である。
じわじわとくる面白さ