期間限定の即席キャット・カフェにて癒される

 

 長旅や海外生活をしていると、異国にただいるだけで疲れることもある。現地人とのコミュニケーションは母国でのようにはいかず、知らず知らずの内にストレスが溜まっていることもある。そんな時のストレス解消法を編み出しておくことも、長旅や海外生活をする人には生活スキルの一つとして重要だ。

 

 

 自分の場合、「猫と遊ぶ」ということがストレス解消にはかなり効果的なようである。幸い、アジアの多くの街角において、野良猫は割とよく目にする存在であり、また飼い猫として飼われている猫も多い。また、タイ王国では汚れた野良犬はどこでも目にする。こちらはちょっと遊ぶ気になれないが。

 

 先日、タイ王国南部のクラビ県にあるアオ・ナン(ナン・ビーチ)に行く道すがら、クラビ県の生活区であるクラビ・タウンに立ち寄った時のこと。近隣に小学校や中学校のあるメイン通り沿いに、ふとバイクを停められるスペースを見つけたので、休憩がてらゆるい感じのカフェ店舗に立ち寄ってみた。

 

 

 中は「カフェ兼文房具屋」という構えで、飲料の販売がされている横に、近所の小学校や中学校の生徒たちが使うであろう文房具を扱っていた。

 

 

 店の奥に、何やら毛むくじゃらの小さな生き物たちがいるのを目の端に認めると、自分はすぐに嬉しくなってしまった。なんと、若い母猫と4匹の子猫がそこにはいたのである。

 

 

 キャット・カフェと呼ぶには余りにも即興のお店であり、そもそも「キャット・カフェ」の体裁を取っていない、「たまたま猫が子供を産んだので、今だけ子猫たちがいます」という状況の店内であったのだが、自分にとっては期間限定のキャット・カフェがそこにはあり、猫たちの動きに目が奪われる。

 

 兄弟のいる子猫たちは、お互いに噛み付いたり引っ掻いたり、蹴っ飛ばしあったりしながら、相手を傷つけない程度の力加減を学んでいく。これは人間に対してじゃれつく時にもちゃんと力加減をするようになるので、猫たちが小さいうちに兄弟と一緒に育つというのは大切なことだ。まだ目も開かない子猫が一匹だけで人に育てられると、じゃれつく際の力加減が分からずに育ってしまい、人間をしばしば傷つけてしまうことになる。

 

 

 作家の町田康さんがどこかで言っていた発言で、以下のような内容の名言があった。

 

 

「犬は人間のことを体全部が人間だと思っていて、少しだけ人の体に触れているだけでも喜ぶ。猫は人間の頭だけを人間だと思っていて、首から下は土台だと思っている。」

 

 

 確かに、猫は飼い主である人間の頭に対しては、激しい攻撃を加えないが、首から下は人として認識していないのではないかと思うような行動を取ることが多い。

 体に飛び乗ったり、遊び紐を持つ手を全く意識していなかったり、人の手や足に噛み付いたり猫キックを喰らわせたり。飼い主の顔を攻撃することは少ないけれど。首から下は土台だから少し手荒に扱っても大丈夫だと考えているような節がある。「首から下が土台」などという生き物がいるかどうかは置いておいて。

 

 この即席キャット・カフェの店主の女性は、かつてバンコクで仕事をしていた際に、日本人の男性と付き合っていたことがあると言っていた。その後、実家のあるクラビに帰ってきて、「カフェ兼文房具屋、ときどき即席キャット・カフェ」をまかなっているのだそうだ。お店に来る子供達からは、家族のように慕われていた。

 

 

 もう数ヶ月もすると、子猫達も育ち、いずれ何匹かは里親に貰われていってしまうのだろう。期間限定の即席キャット・カフェに立ち寄ることができた幸運を感じる、クラビ・タウンでの一時であった。

 

 

 

 

 

 

 

首から下は土台