『いま生きているという冒険』 石川直樹

 

 写真家の石川直樹さんによる「旅という冒険の手段」に関する本。読者対象層が中学生以上という本なので、 漢字の多くにルビがふってあるのが、大人には逆に読みづらい印象を与えるが、読み進めている内に気にならなくなるから不思議だ。

 文体は全ての装備を知恵に置き換えることの方が読み物としての完成度は高いが、10代の読者も想定しての文章なのでこれは仕方がない。装丁も親切だなと感じていたら、祖父江慎さんだった。

 

 

 本書では石川さんが10代で最初に行った海外の旅である、タイ・インド・ネパールでの旅を皮切りに、カヤックを操る旅、20代前半での北極から南極への旅(Pole to Pole)、GPSなどに頼らない星の航海術(スター・ナビゲーション)を学びにミクロネシアに滞在した旅、世界の頂きであるチョモランマへ登った旅、地上から離れ垂直方向への気球の旅などが収められている。

 

 それぞれの旅にかられた動機から、旅へ向けた準備、旅の途上での艱難辛苦、旅の知恵など、旅にまつわる諸々の現象に関し、石川さんの鋭い感受性を通して濾過された文章で綴られている。また、この本には多数の美しい写真が収められているので、それらをパラパラと観ているだけでも楽しめる。

 

 「観光旅行に行くことと旅に出ることは違います。観光旅行はガイドブックに紹介された場所や多くの人がなんども見聞きした場所を訪ねることです。そこには実際に見たり触れたりする喜びはあるかもしれませんが、あらかじめ知り得ていた情報を大きく逸脱することはありません。一方、旅に出るというのは、未知の場所に足を踏み入れることです。知っている範囲を超えて、勇気を持って新しい場所へ向かうことです。それは、肉体的、空間的な意味合いだけではなく、精神的な部分も含まれます。むしろ、精神的な意味あいのほうが強いといってもいいでしょう。」P.252

 

 少なくない時間とお金をかけて、「世界中を旅しているつもり」になっている自称旅人は多いが、石川さんの定義からすると、多くの人は「まだ本当の旅をしていない」ということになるのだろう。

 

 

 

 

 

 「人を好きになることや新しい友だちを作ること、はじめて一人暮らしをしたり、会社を立ち上げたり、いつもと違う道を通って家に帰ることだって旅の一部だと思うのです。」P.253

 

かれ少なかれ、世界中のすべての人は旅をしてきたといえるし、生きることはすなわちそういった冒険の連続ではないでしょうか。」P.253

 

 

 

 そう、人生とは心の持ちようによって、どこにいても旅になるのである。

 

 

 

 

 

生きることを旅に