タイ王国トラン県ハット・チャオ・マイ国立公園は美しい

 

 タイ王国南部のトラン県をご存知だろうか。象の頭部のような形をしたタイ王国の鼻の先に近い南部にある県だ。さらに南のサトゥン県を越えると、そこはもうマレーシア。そのトラン県に、今回紹介するハット・チャオ・マイ国立公園はある。

 

 

 近隣には世界的に有名なプーケット島、有名度は一段落ちるがずっと快適なクラビ県が北側にある。トラン県は人口も少なく、パブリシティも控えめ、訪れる人もまばらなのであるが、静かに自然を満喫したい人々にとっては、そこが逆に狙い目である。

 

 

 外国人にあまり知られていないので、ハット・チャオ・マイ国立公園を訪れるのは地元のタイ人が主流のようだ。タイ人のチケットは40バーツ、外国人料金は幾らだか分からなかった。というのも、バイクでここを訪ねた際に、タイ人の友人がチケットを買ってくれたのだが、守衛のモスリムの女性が、「一人分のチケット代でいいよ」とまけてくれたのだ。お金大好きのタイ人らしからぬ、南部モスリム女性の気の良さが嬉しかった。ヘルメットにマスク装着という私が外国人だとばれなかったのもよかった。ばれたらきっと、外国人は200バーツぐらいは取られるのであろう。

 

 「タイ人にしては珍しい気の良いチケット売りだね」、と友人と話していたのだが、ハット・チャオ・マイ国立公園の施設は、まだ建設途中である箇所が多く、くちはてた感じのトイレなども痛々しい。その分、静かで美しいビーチが堪能できる。ほぼ貸切の国立公園内では、水着に着替えるのも更衣室が要らないほどだ。下手をすると、自然体に素っ裸で泳いでいても、猿や野良犬以外には、誰にも遭遇しないかもしれない。

 

 タイ王国には、大きく分けて二つの海がある。

 タイ湾に面した海、そしてアンダマン海に面した海だ。どちらの方が海の水の透明度がより高いかと言えば、アンダマン海であろう。というのも、2004年末に現地を襲った大津波により、陸上の人々は大変な被害を受けたのではあるが、その大津波は海の中の汚染された物質を洗いざらい持って行ってくれたらしく、「津波の前よりも海が綺麗になった」という副次的な恩恵がある。主に人間が汚した海を、地球のするクシャミが綺麗にするという自浄作用が働いたのだ。

 思い返すと、今こうして生きているというのは不思議なものだ。2004年末にプーケットのホテルを予約していたのだが、彼の地を訪れる数日前に大津波が襲い、予約を入れていたホテルでも50人が亡くなった。大津波が来るのがもう数日遅ければ、或いは自分が訪問するのがもう数日早ければ、自分も被害者の一人であったかもしれない。生と死の境目は、時に紙一重なのである。

 

 さて、ハット・チャオ・マイ国立公園の施設が未だに未整備なのは、ひょっとすると10年以上前の津波の被害を受け、その後予算が付かずにそのままになっていたからかもしれない。その分、美しい海と静かな環境がそこにはある。プーケット同様に、また多くの人でいずれ賑わうのであろうが、それまでは静かな海を愛する者の目的地として、旅人を静かに受け入れてくれる。

 

 

 今生きていることの有り難さを感じ、地震や大津波で亡くなった人々の冥福を祈ろう。それがタイ王国であれ、日本であれ、どこであれ。

 

   いつかまた