『絵と言葉の一研究 わかりやすいデザインを考える』寄藤文平

 

 近年、デザイン界や広告界の人々の仕事術や思考法が注目を集めることがしばしばある。サムライの佐藤可士和さんやタグ・ボートの岡康道さんが代表例であろう。多くの「面白くわかりやすい」イラストレーションの仕事で人気を博している寄藤(よりふじ)文平さんの本で、気になる本があったので手にとってみた。彼の『大人たばこ養成講座』などは、タバコを全く吸わない自分でも買ってしまった本だ。

 

 寄藤文平さんのデザインは、一見すると「直感だけでスラスラと描いているのではないか」という気もするのだが、実は非常に深い思考の後に描かれた、「わかりやすく面白い」イラストレーションであることが分かった。物事を説明する際に、まずはその事象(データ)を冷徹に見極め、その上でそれをどう「わかりやすく面白い情報」として伝えるか、彼の仕事にはずっとその視点がある。

 

  また、プロとして打率8割でやっていくための「デザインの引き出し」とも言える「イラストレーションの方法論(型)」が彼の中では組み立てられており、赤瀬川源平の『千利休 無言の前衛』を例にイラストレーションのパターンを惜しげもなく紹介している。

 

 終盤の「ブック・レビュー」は、本書の紙面を増やすための処置として挿入されたような冗長感は否めないが、それでも内容は優れている。寄藤さんは、デザインやイラストレーションに限らず、仕事全般に通じる物の考え方があるからこそ、ずっと売れっ子でいられるプロのイラストレーターなのだと分かる。

 

 通読するのに1時間程度しかかからいない本ではあるが、内容は示唆に富む上に面白い。良書を見つけられ、楽しい読書の時間であった。

 






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