フィリピンはマニラの交通渋滞と空気汚染

 

 

 「フィリピン社会の拡大する所得格差」について書いた。

 今回は、「首都マニラの交通渋滞と空気汚染」について。

 

 フィリピン社会には、約8割の低所得層と、1割の中間層、1割の富裕層がいると言われている。富裕層はどこへ移動するにも自家用車で移動するのが一般的だ。しかし、低所得層と中間層の合計9割の人々の交通の足は、公共交通機関に頼らざるを得ないのであるが、首都マニラの公共交通は、お世辞にも発展しているとは言えない。

 

 

 まず、最下層の人々の乗る交通手段といえば、フィリピンならではのジープニーがある。古いピックアップバスの車体の荷台に、向かい合わせで客が腰掛けるスタイルだ。外見はデコレーションされたトラック(デコ・トラ)よろしく、いかついフェイツに彩色やライティングが施されている。

 

 乗車席には屋根はあるものの、基本的に左右と後ろは空いているので、風を感じることができる利点がある反面、周囲の排気ガスはそのまま入ってくる。距離によって料金が変わるが、短距離なら数ペソから移動ができるジープニーは、健康被害はかなり心配ではあるものの、低所得者層の強い見方でもある。

 

 

 ジープニーの次に、庶民の足として欠かせないのが、公共バス網であるが、ジープニーと比べると料金がぐっと上がる。エアコンの有無で料金も代わり、運転はデコ・トラ仕様のジープニーと変わらないぐらいに荒いドライバーも多い。心を病んでいるのではないかと心配になる程、ドライバーが無闇矢鱈とクラクションを鳴らしまくるのがマニラ流だ。乗客は荒れ狂うドライバーの運転にも、じっと耐えて乗っていないといけない。それでも、エアコンの効いたバスは、ジープニーよりは密閉性が高いので、排気ガスによる健康被害はずっと少なさそうだ。

 

 

 では、首都マニラにはサブウェイはないのかというと、実はある。だが、たったの3本程度しか稼動している路線はなく、首都メトロ・マニラのおよそ1200万人という人口を考えると、通勤・通学する人々の数には遠く及ばない。東京都に3本しか地下鉄や地上鉄道網がなく、都民がその状況で通勤・通学をする様を思い浮かべてみれば、その混乱ぶりは容易に想像できるだろう。

 

 

 マニラの朝晩の通勤通学の時間帯には、数量の短い列車への乗車待ちのために、これまた短いプラットフォームから階段へと行列ができ、場合によっては駅の外までその行列が続いている光景が見られる。

 

 

 輸送能力の著しく低いサブウェイしかないマニラなので、サブウェイ以外の区間を人々はリクシャー、ジープニー、バス、バイク、車などでの通勤・通学を余儀なくされているのであるが、1200万人の人口の街でこれらが一斉に蠢きだすと、当然のように交通渋滞が発生する。

 朝晩の交通渋滞は、すでにメトロ・マニラの風物詩となっており、渋滞した幹線道路の近くの道などでは、排気ガスによる空気汚染が非常に深刻になっている。海に面しており、汚染物質が風で流されていきやすい土地柄ではあるが、それでも朝晩のラッシュ・アワーに路上を歩くのは、マスクを着用していないと危険である。

 

 

 都市計画やインフラ網の整備が後手後手に回ったつけを、低所得者層、中間層、富裕層の順番で払わされているのが、今日のマニラであると言えよう。

 

マニラに行くには、マスクを忘れずに。