静かで長閑な世界遺産スオメンリンナ島の日常

 

 フィンランドはヘルシンキの「世界遺産スオメンリンナ島」について書いている。

 

 日中、観光客がやってくることを除けば、スオメンリンナ島の日常は、いたって静かで長閑だ。基本的には風と波の音しか聞こえず、他に音がするといえば、島に多く生息するカモメや鴨たちが時折あげる奇声ぐらいだ。

 ほとんどの観光客は、ヘルシンキの港から小舟に揺られて日中にスオメンリンナ島を訪れ、日が暮れる前にまた船に乗ってヘルシンキの街へと帰っていく。

 また、ヘルシンキ在住の市民にとっても、スオメンリンナ島はピクニックがてら訪れるのに、ちょうど良い場所のようだ。入島料というものが要らないのも、スオメンリンナ島の行政の良心的なところである。

 飼い猫を籠に入れてスオメンリンナ島までやってきて、犬のように紐をつけて散歩している猫とその飼い主のいる光景などは、なんとも言えず微笑ましい。とうの猫にとっては籠に入れられ、船に乗せられ、なんだかよく分からない見知らぬ島に連れて来られ、迷惑であっただろうが。

 各国の要塞であったスオメンリンナ島は、主に6つの小さな島からなる群島なのであるが、島をつなぐ橋を渡って島々を散策しても、半日もあれば満足して帰っていくことができるサイズではある。

 島の地図には、見所として幾つかの名所の記載がある。島の概要を伝えるミュージアム、少ない島民のための図書館、潜水艦を改造したミュージアム、武器ミュージアム、小ぶりな教会、島の西側に点在する大砲群、自然へと帰りつつある廃れた武器庫、また地図には記載がないが離島という特質を活かした刑務所もある。

 しかし、スオメンリンナ島まで足を運び、日中だけ駆け足気味に島を見て回ってヘルシンキの街へと戻ってしまうのは、いささか慌ただしいし、勿体無い気もする。

 せっかくなら一泊して島の夜の雰囲気も堪能すると良い。島には数件しか宿泊できる場所はないが、価格はフィンランドにしては意外にもリーズナブルな宿もある。島の北側にあり、かつて学校であった建物を改造したホステルなどは、クオリティの割に価格は安い。ヘルシンキの街とほぼ変わらない価格で日用品を売る近くのスーパーで食材を調達すれば、自炊も可能だ。

 

 北欧諸国は物価が高いことでよく知られているが、工夫や忍耐次第では、ある程度まで出費を抑えることもできる。

 かつて要塞として使われていた頃には、一般市民が気軽に立ち寄ることなど出来なかったのであろうが、今日のスオメンリンナ島はいたって平和そのものである。逆に、平和すぎるくらいに長閑な時間が流れるこの島に、大砲や武器庫の類が残されている方が違和感を感じるほどだ。またヘルシンキに行く機会があれば、スオメンリンナに宿を求めたいと思わされる、静かで魅力的な島である。

夜のスオメンリンナ島も美しい