建築家のザハ・ハディド氏が他界して

 

 20163月末、建築界を驚かすニュースがあった。気鋭の女性建築家ザハ・ハディド氏が気管支炎で死去したのである。195010月末生まれ、まだ60代も半ばであったという。2020年の東京オリンピックの新国立競技場を設計し、その案が採用されたものの、建設予算が当初見積もりよりも高くなるということで、採用が白紙撤回され、日本人建築家の隈研吾さんの案に落ち着いたことは記憶に新しい。 

 

 今後、彼女の新しいプロジェクトが日本で誕生することはないだろう。 

 

 

 実は、お隣の韓国には、ソウル市の中心にザハ・ハディドさんの手がけた巨大建築「東大門デザインプラザ(DDP)」がある。日本と同様にその建築の外観だけでなく、建設費用が物議を醸し、その維持費も高額なのでいまだに議論の的になっているそれであるが、私は個人的には好きな建築物である。

 

 

 もともとは軍の持っていた敷地か何かの跡地であり、ザハ・ハディドさんの溶けた有機体のような外観の巨大な建築物は、ソウルという巨大都市に一石を投じている。一つの溶けた有機体のような巨大な構造物がそこにあるのは、ソウル市を俯瞰してみたときにも目立つものであろうと思う。

 

 

 実際に、その建築物を訪ねてみると、それは主にコンベンション(会議)やアートの展覧会などに用いられていることが分かった。溶けたガラスのような外観は確かに奇抜であり、建築費もよくある箱型の建築物を建てるよりもずっとかかったことであろうことが、素人目にも感じられる。アメリカの建築家、フランク・O・ゲーリーの建築物も曲線が特徴的であるが、同じく箱型の建築物よりも建築費が嵩むという。ザハ・ハディドさんの建築物の場合は、さらにトロけるような外観をしているので、よりお金がかかるのかもしれない。

 

 

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 さらに、バブルの頃に「各国の建築家の見本市」とも揶揄された中国の北京には、ザハ・ハディドさんによる「銀河SOHO」「望京SOHO」と二つのSOHOビル群が建ち並んでいる。これらも一見してザハ・ハディドさん的な建築だと分かる。

 

 個人的には、2020年の東京オリンピックには、隈研吾さん設計の新国立競技場よりも、ザハ・ハディドさんの巨大な自転車の競技ヘルメットのような外観のあの建築物が見てみたかった。日本の行政の無駄遣いと比べれば、その後もずっと東京のシンボルとなることを考えると、数千億の建設費の体育館など大した額ではないはずなのだが。

 また、ザハ・ハディド案を日本が撤回するやり方もまずかった。

 

 検討会議を通り、正式に採用しておいて、あとから「やっぱり高くなりそうだから要りません。もう少し安いのにします。」というのは、「日本国としての信用」を間違いなく損なった。しかも、ザハ・ハディドさんからの修正提案などに対しても聞く耳を持たなかったのは、思考の偏狭な老人国家・日本の悪い面が出てしまったと言えるだろう。

ザハ・ハディドさんの冥福を祈る