中国遼寧省丹東市: 北朝鮮を垣間見る遊覧船

 

 北朝鮮は北側の長い国境を中国の遼寧省・吉林省と接している。そして、残る国境の北東のごく一部をロシアと接している。

 

 中国側において、「北朝鮮との国境の街」として最も有名なのは、北朝鮮との比較的長い国境線のなかでも、遼寧省の丹東(だんどん)市であるだろう。

 丹東の街は、朝鮮半島に近い辺境の街だけあり、中国の中でも朝鮮族の人々が多く暮らす街の一つだ。街には多くのハングル文字が踊り、朝鮮系のスーパーやレストランがそこら中に見られる。街角の旅行社が扱う旅行商品の多くが、北朝鮮観光にまつわる商品であるのも、この街の特徴と言える。

 

 世界的に見て、「中華人民共和国のパスポート」はノー・ビザで渡航できる国数が未だに少ない「弱小パスポート」であるが、中国が北朝鮮の最大の支援国という背景もあり、使い勝手の悪い「中華人民共和国パスポート」でも日帰りの「北朝鮮観光」ができる。

 

 逆に、世界でも上位三番目ぐらいに融通の利くパスポートである「日本国パスポート」であっても、北朝鮮の国境線を越えるのには、ビザ取得が必要である。

 中国と北朝鮮の間を流れる鴨緑江(やーりゅーじゃん)には、両国の境界線となっているこの川を30分ほどかけて遊覧して周る遊覧船が運営されている。

 

 他所のなんでもない川であれば、50元の料金は割高であると感じるであろうが、ここは川向こうが「他国」という、「国家システム同士による手打ちの境界線」という特徴を持つ。ここで北朝鮮の領地へと近づける遊覧船は、北朝鮮に渡航するビザを持たない各国の旅人にとって、「北朝鮮に最も近づける数少ない手段の一つ」である。

 中国と北朝鮮の間にかかる鴨緑江橋は、アメリカ軍の空爆によって断絶されたままになっており、主に中国と北朝鮮の物資の運搬に使われている橋のすぐ横で、観光名所としてそのまま残されている。

 

 この橋の上を中国の丹東側から北朝鮮側に向け、30元ほどの入場料を払うと歩いていけるのであるが、北朝鮮側の陸地からやや遠い場所で橋は途切れているので、遊覧船の方が北朝鮮の陸地を「より近くまで垣間見に行く」には適した手段となっている。

 遊覧船に乗って鴨緑江の中間地点辺りに到達すると、北朝鮮の国境沿いの町シヌイジュと中国側の丹東との発展の差が、際立って見える。イヌイジュ側は、経済発展の「け」の字もまだこれからという感じであるが、丹東の街には中高層のマンション群が建ち並び、北朝鮮側の住民から見た丹東の街は、「煌びやかな大都会」に映ることだろう。

 

 実際のところ、丹東の街は「中国のなんでもない地方土地の一つ」に過ぎないのであるが。

 

 

 遊覧船は、中北の中間地点を越え、北朝鮮の陸地に近い川面を静かに走る。橋の近くには、子供ですら騙されないような「子供騙しの遊園地」らしきモノも目視できる。少しすると、北朝鮮の住民や軍人が、なにやら作業をしている姿も見えて来る。北朝鮮の人々は、まるで中国の文化大革命の時期の人民服のような出で立ちだ。遊覧船上の中国人たちも、「文革時代の中国のようだ」と声を漏らす。