ハノイのホー・チミン廟前の衛兵はゆるめ

 

 「モスクワのクレムリンに立つ衛兵」について書いた。

 

 実は、ベトナム社会主義共和国の首都ハノイにも、同じ社会主義国家の先輩であるロシアに見習ってか、衛兵の行進が見られる場所がある。ベトナムの独立に尽力し、国父として崇められているホー叔父さんことホー・チミンの遺体が収められている「ホー・チミン廟」前にある広場がそこだ。

 

 中国北京の天安門広場をずっと小さくしたようなこの区域は、北京やモスクワのクレムリンと同様、国会や政府機関が集積する一帯だ。ベトナム人はハノイに観光に来ると、まずはホアン・キエム湖の界隈とオールド・クオーター、そしてホー・チミン廟やミュージアム周辺を観て周るという。見所の少ないハノイにおいては、多くの異邦人も同じような場所を目指すのであるが。

 北京の天安門広場やクレムリンのピリピリした警戒体制を垣間見た者からすると、ハノイのそれはどうにも「ゆるい」と感じるものである。衛兵の行進も「今日初めて訓練します」というような雰囲気のややぎこちない行進であるし、観光客が立ち入り禁止区域に入って写真を撮っていても、衛兵たちは見て見ぬ振りをしている者もいる。同じ社会主義・共産主義の国でも、中国は政府や軍部が人民に対し高圧的・威圧的であるのに対して、ベトナムのそれは「ずっとゆるさが目立つ」のが特徴的だ。

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 ベトナム人の観光客たちは、放っておくとその辺にしゃがみ、座り込んだりする。中には寝転がるようなのも出てくるが、ここベトナムでは中国のように強制的に排除されるような張り詰めた空気はない。むしろ、生暖かい空気と同様に、ゆるんだ気配が辺りに充満している。広場でジョギングをする人々の動きもゆるい。

 ベトナム人のこのファジーさが、世界最強のアメリカ軍をしてもベトナム戦争で勝てなかった理由ではないだろうか。規律がゆるく、一見デタラメに見えるファジーさが、ベト・コンたちのポテンシャルの高さを引き出したのかもしれない。なにせ、モグラのように穴を掘って神出鬼没に立ち回り、予測不能の動きをするのだから。

ゆるく奥深いベトナム