バンコク随一のアート・スペース存続の危機。(後編) 静かな政変の始まり?

 

 前回のバンコク随一のアート・スペース存続の危機?(前編)からの続きです。

 

 

 さて、タイ王国では数年おきに「政変」が起きるのが行事となっている。「タイ王国のオリンピック」と揶揄されるほどに、軍事クーデーであったり、政権打倒の民政同士の争いであったりといった具合に、いざこざが絶えないのがタイ王国である。

 

 先代のプミポン国王が崩御した際には、国中が悲しに包まれ、現国王への権限委譲までにも何か起こるのではないかという雲行きになったが、「国民と一緒に喪に復したい」という現国王の殊勝な言動により、ことなきを得た。(しかし、その後も彼はタイ王国の国王でありながら、多くの時間をドイツで生活していたり、3度の離婚を経て尚お妃を数ヶ月の間に二人も娶るというある意味で「暴れん坊将軍」ぶりは健在なようである)

 

 先代のプミポン国王は「セルフ・ブランディングの天才」であったのは自明であり、直接あって話したこともない人々からも敬愛されていた。つまり、「見ず知らずの赤の他人」であるが、タイ王国の多くの人たちは、すっかり彼のブランディング策にハマってしまっていたのである。

 

 しかし、彼の一人息子である現国王は、かなりの「放蕩息子」っぷりを若い頃から繰り返しており、その所業は枚挙にいとまがないほどである。それでも先代がしっかり残しておいてくれた「王室に対する強力な不敬罪」や基本的に「軍隊・警察は王室の所属」、明文化されていないものの「王室は法律の上位に位置する」という既得権益により、世界で一二を争う大金持ちの王室が維持されている。タイ王家の資産額は計算できる範囲だけでも3–4兆円と試算されている。

 

 「微笑みの国」という「陳腐な広告コピー」が浸透しているタイ王国であるが、その実は「お笑いの国」である。クレディスイスのリサーチでは、中国、インド、アメリカなどを置き去りにして、タイ王国の貧富の差は世界一である。上位1%の富裕層が国の富の67%を独占するという。また、交通事故の死亡者発生数は世界二位、殺人事件の発生率も日本の四倍以上という具合だ。「微笑みの国」ではなく、「お笑いの国」なのである。

 

 そんなタイ王国において、ほぼ無料で現代芸術に触れられる機会を提供しているBACCは、とても貴重な存在である。先代のプミポン国王の忠実な娘として活躍していた国民にも人気のあるプリンセスと、その兄弟である唯我独尊な現国王とのパワーバランスが、BACCの存続にも少なからず影響を与えているであろうと、タイ王国の人々の間で囁かれているのであった。

 

BACCには存続してほしい。

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