分かりやすい、『人工知能と経済の未来 2030年雇用大崩壊』

 

 20167月に文春文庫から出版された『人工知能と経済の未来 2030年雇用大崩壊』(井上智洋)を読んだ。

  とても分かりやすく、2030年後に起きるであろう「AI技術が引き起こす大変革」と「それによってもたらされる未来社会の雇用やとるべきオプション」を描いてみせている。

 

 平易な文章の端々から、著者のユーモアのセンスのよさ、親切そうな人柄が垣間見られる。文庫本という物理的にも経済的にも手軽に手に取れる書籍ながら、その中身は示唆に富む。

 さて、未来予測の多くの本は、予測を外しても、「どうせ大したことを書いていないこの本のことなど、みな忘れているだろう」的な、詐欺まがいのものが多い中、本書の予測する未来は、「世の中の9割の人は仕事からあぶれる、忘れられないほどに凄まじい、第四の技術的な大変革の波がやってくる」という内容である。しかも、そのタイム・スケールは、2030(汎用AIの誕生)から2045年(シンギュラリティ:AIが人類の知能を超える)という近未来での出来事だ。もう目と鼻の先である。

 本書の概要を伝えるために、以下に幾つかの鍵となる言葉を拾ってみよう。

 

ü 「人工知能」(Artificial Intelligence, AI)というのは、知的な作業をするソフトウェアのことで、コンピュータ上で作動します。最も身近な人工知能として、iPhoneなどで使われる音声操作アプリ「Siri」があります。(P.20

 

 

ü 最近、ディフュージョン(普及)の期間はかなり短くなっており、アメリカで自動車が人口の50%まで普及するのに要した期間は80年以上でしたが、テレビやビデオは30年ほど、携帯電話は10年ほどです。ディフュージョンの期間はますます短くなっていくものと思われます。
だとすると、ウェイター・ウェイトレスのようなおなじみの職業がAI・ロボット代替されてなくなる日は、そんなに遠い未来ではないかもしれません。(P.39

 

 

ü 経済システムと産業の変遷
1760
:第一次産業革命(蒸気機関)
1870
:第二次産業革命(内燃機関・電気モータ)
1995
:第三次産業革命(パソコン・インターネット)
2030
:第四次産業革命(汎用AI・全脳アーキテクチャ)
P.103

 

 

ü 機械に奪われにくい仕事
 人間はそんな汎用AI・ロボットには負けない幾つかの領域を持つものと思われます。生命の壁が存在するならば、
・クリエイティブ系(Creativity, 創造性)
・マネジメント系(Management, 経営・管理)
・ホスピタリティ系(Hospitality, もてなし)
といった三つの分野の仕事はなくならないだろうと私は考えています。(P.160

 

 

ü 日本がAIの研究開発を怠ると停滞路線に取り残されるということには変わりありません。第三次産業革命に日本が乗り遅れた結果、私たちの暮らしは、パソコンの基本ソフトウェアはウィンドウズ、検索エンジンはグーグル、ネット上のショッピングはアマゾン、スマートフォンはiPhoneSNSはフェイスブックやツイッターを使うような体たらくです。それらの製品・サービスで得られる収益はアメリカの各企業に持って行かれます。(P.189

 

 

ü 第四次産業革命に日本が乗り遅れた場合、ロボットが働く無人の工場・店舗を所有する外国資本の企業から商品やサービスを購入しなければならなくなります。極端な話、日本企業は全く収益が得られず、日本人の収入の道は絶たれるということになりかねないのです。(P.189

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 近未来では、ターミネーターなどで描かれたSFのディストピアの世界が現実となるのか、はたまた汎用AIによる生産性の爆発的な向上と並行して、全ての人々に生活していけるだけのベーシック・インカム(BI)を配分するユートピアとなっているのか。本書を読むことで、その考え方の一端に触れることができる。

 

 第三次産業革命(パソコン・インターネット)で成功した企業の少なからずが、AIの分野に多額の投資をしている。他の分野で成功した起業家が、AIの未来に向けた取り組みを始めている話を耳にすることが多くなった。

 

 今日、人々が時間を割いている多くの事柄が不要になる。いずれ語学の習得という回りくどいことをしなくても、瞬時に極めて優れた同時通訳者のように他言語に翻訳してくれる汎用AIが現れるであろう。 自動車やバイクがAIによる自動運転となるので、自動車やバイク免許を持たなくともよくなる。

 

 技術の進歩というのは、少しずつ改善するものではなく、一気に次の段階に移行する。中国大陸の多くの家庭で有線電話が普及する前に、携帯電話が爆発的に普及したのを我々は今世紀に目にしている。汎用AIの普及は、ひょっとするとそれ以上のスピードでやってくるものなのかもしれない。

どうやら、これはそう遠い未来の話ではない。