花村萬月さんによる旅にまつわる新書。
主に彼のオートバイ遍歴、野宿遍歴、そして旅した各地の軽い考察がごちゃ混ぜになった内容である。
新書とする際に書き下ろしたものと、別の媒体に書いた旅に関するエッセイを混ぜ合わせて一つに本にする際に、編集者は整合性をとることなくそのまま収録したのであろうか。終盤では、「どうした要素があると作家になれるか」など、「旅」とはそもそも関係のない話まで出てくる始末であり、これでは酔っ払いの戯言とそう変わらないのではないか、とさえ思えるような節もある。
しかし、彼の書き綴った「旅」への考え方の部分部分には「旅の真理」がみて取れる。これからオートバイで中長距離の旅をする人や野宿を考えている人の参考に、いくばくかはなるだろう。
日本ではオートバイの免許をとるのに原付、小型、中型、大型、オートマ限定などいくつもの区分があるが、タイ王国などの東南アジアでは「バイクの免許」という大まかなくくりで取れてしまうのが現状である。しかもその取得費用は驚くほど安い。日本円にして数千円である。(というか、日本が高いのだ)
だが、日本でもかつては「自動車免許にオートバイの免許が付いてきた」、さらには「船舶免許まで付いてきた」などという牧歌的な時代が、つい30−40年前まではあったということをこの本を通じて知った。
花村萬月さんの物の考え方は時に「独断と偏見」がきつく、読んでいると呆れる事もあるが、それが彼の作家としての持ち味の一つなのだろう。
鉄馬を駆る旅の心地よさ
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