ムーミンの作者であるトーベ・ヤンソンの小説に、『軽い手荷物の旅』という作品がある。
10数年前に読んだきりで、肝心のその物語の内容は忘れてしまったのであるが、タイトルだけはずっと心に残っている。ひょっとすると原題はこれとは違うものなのかもしれないが、この『軽い手荷物の旅』という書名が、ずっと心の隅の方に残っているのだ。それだけ自分にとっては響くコピーなのであろう。
日本と海外を行ったり来たりしていると、その移動中の荷物の量がどうしても気になる。荷物が多い時には、運ぶのを考えただけでも気が重くなる。そして、この書名の『軽い手荷物の旅』という潔い身軽な感じが、ずっと心に残っているのかもしれない。
20代の頃はとにかく荷物の多いタチであった。読みもしない本や着もしない服、使いもしない文房具などをあれこれ鞄に詰め込んで、汗水垂らして旅路を歩いたものである。
しかし、ある程度旅慣れてきて、「これは必要ないかな」と持ち物を少しずつ減らすことができるようになってきた。「あれもこれも」と欲張って持って行きたがっていた頃と比べると、やっとのことで「必要なものと必要でないもの」の選別ができるようになったとも言える。随分と成長に時間がかかるものだ。
今年も各地に旅することになりそうだ。できるだけその旅にあった「軽い手荷物の旅」とできることを祈ろう。
自分の荷造りの「下手さ」と「遅さ」には定評があり、もうそれは「祈り」に近いものだから。
ムーミン以外も素敵です。
そのほかの「書評」へ
そのほかの「ブログ記事」へ