久々に写真家で作家の藤原新也さんの『メメント・モリ』を目にし、手に取ってみると、2008年11月5日に大幅に改編された新版であった。旧版を初めて手にしたのは十数年前になるだろうか。ガンジス川かどこかの川辺らしき場所で、人間の屍体が野良犬に喰われつつあり、その写真に
「ニンゲンは犬に食われるほど自由だ」
という言葉が付いていて衝撃を受けた本である。新版でも同じ写真と言葉は残されていた。
本書のタイトルである「メメント・モリ」とはラテン語で「死を想え」という意味だという。本書に収められた70枚以上の写真は、どこか此の世を霊魂が眺めているかのような視点のトーンだ。
新版を手にしてみて感じたのは、藤原新也の『メメント・モリ』はより研ぎ澄まされて帰ってきたということだ。
「死の瞬間が、命の標準時。」
「此の世は彼の世である。
天国もある。
地獄もある。」
「死者の灰には、階級制度がない。」
「あの人骨を見たとき、
病院では死にたくないと思った。
なぜなら
死は病ではないのですから。」
「死とは、死を賭して周りの者を導く、
人生最後の授業。」
私事であるが、近年祖母が他界し、愛犬も逝った。ここ数年、死について考えることが以前よりも多かったのである。「死を想え」というタイトルに共鳴し、久々にこの本を手にして、「やはりすごい本だな」と再確認した次第である。
まだ手にしたことのない人は、書店で立ち読みでもしてみることをお勧めする。きっと手に入れたいと感じるだろう。
メメント・モリ、死を想え。
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