『ネクストラベラー:シンガポール』 高城剛

 

 近筆『空飛ぶロボットは黒猫の夢を見るか?』が面白かった高城剛さんが旅行シリーズ本を出していたので、気になっていた。

 

 さすがにいつも面白いコンセプトを出して耳目をさらうことに余念のない高城さんだけあり、「Next + Traveler = Nextraveler(ネクストラベラー)」ということ。

 

 旧態依然としたほぼ広告しかない中身や、写真と情報だけネットで集めて作ったガイド・ブック業界に一石を投じようというコンセプトが売り。『地⚪️の歩き方』など「ほぼ広告で中身がない」という旅行本とは一線を画す、というのを「売り」にしている。

 

『ネクストラベラー Vol.6 シンガポール』

2016225日 刊

 では、実際に手にとってみて、どうだったか。

 

 まず、予想以上に「コンパクトで薄いな」という印象を持つ。シンガポールで高城さんが面白いと思った場所や事柄に関して、60以上の箇所に関して、ミニ・コラムが書かれているのだが、シンガポールに詳しい人には物足りない内容。シンガポールに一度も行ったことのない人であれば、シンガポールという都市国家の断面や輪郭を「おぼろげながらに立ち上がらせる」のに役には立つかもしれないが、一度でもシンガポールに行ったことのある人にとっては、物足りない内容となっているのではないかと思う。

 セブン&アイ出版から出ているので、全国に2万店舗近くあるセブン-イレブン各店舗で販売されていたのだろう。価格が1800円+税とやや高めであるが、例によって「高城さんの撮った写真が素敵な雰囲気」であるのが売りになっている。一冊を読み通すのに1時間もかからないのであるが、読み終わった後に残るのは、「高城さん、実はそうシンガポールにも詳しくないのだろうな」ということ。

 

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 定住していないで年に数回行くという程度では、さすがの高城さんでもこの程度の内容のものしか書けないのかと思うと、やや残念ではある。本の執筆にも投資した時間と経費、そこから上がる売上など費用対効果を考えて作っていそうで、この内容であれば500円、高くても1000円が良いところであるだろう。

 

 しかも、そのほとんどは写真代としての価値しかない。内容をもう少し丁寧に書いてくれているのであれば、それが読者にも伝わると思うのだが、高城さんにとっては、「片手間の小遣い稼ぎ」のシリーズ本なのかもしれない、と思わざるを得ない内容である。

 バージョン・アップして、Ver.2では最低でもこの倍の量の汗をかいて欲しいと思うが、1がこれなので2の企画はないかもしれない。「ネクストラベラー」、ネーミングとコンセプトは良いのだけれど、その分、期待していた人々の失望も大きそうだ。

 

 1800円+税という値段は、安くない。それなりに内容がしっかりしているロンリー・プラネットなどでもこの位の値段設定なので、「いい感じの写真だけでごまかそう」というのでは、中期的には「高城剛さん」というブランドの価値を下げることになりそうだ。

『ネクストラベラー Vol.6 シンガポール』

2016225日 刊

変わりゆくシンガポール