『危機とサバイバル(Survivre aux crises)』 ジャック・アタリ
21世紀を生き抜くための<7つの原則>
世界の変化の激しさに翻弄されている人が多い。かくいう自分も「なんて変化の早い時代に生まれたことだろう」と驚くことしきりだ。そこには多くのチャンスも潜んでいるが、大きな危険も孕んでいる。危険をチャンスに変えるためのヒントを説く書籍は多い。この本もそうした本の一端を担う。本書は、ヨーロッパ最高の知性の一人と謳われるジャック・アタリの2014年日本刊の書籍。
この中でサバイバルに必要なキー・フレームとなっている<7つの原則>を個人の生活に当てはめ、自分の置かれた環境に適したものに昇華することができれば、危機を乗り越えチャンスに変えられる蓋然性も上がってくるようだ。スティーブンRコビーの『7つの習慣』など、「7つの」というのが多いような気もしなくはないが。
以下、「危機とサバイバル」の<7つの原則>抜粋。
サバイバル戦略に必要な<7つの原則>
第一原則 <自己の尊重>(Respect de soi-meme)
自らが、自らの人生の主人公たれ。そして、生きる欲望を持ち、自己を尊重せよ。
心がけるべき事:
· 自分とは何者か?を定義する際に、頼りになるのは自己のみであることを肝に銘じること。
· いかなる危機であれ、パニックに陥ってはならない。冷静たれ。
· たとえ認めるのが不快だったとしても、起きた出来事は事実として冷静に受け止めよ。
· 自らが、自らの未来の主人公たれ。その際に、楽観的であっても、悲観的であってもならない。
第二原則 <緊張感>(Intensite)
20年先のビジョンを描き、常に限りある時間に対して<緊張感>を持て。
心がけるべき事:
· 長期的な視野から有益だと判断したのであれば、即材に犠牲を払う判断力を養うこと。
· 同様に、唯一希少なものは時間であり、人生は一回限りであることを忘れてはならない。
· 常日頃から、今を人生最後の瞬間として生きる心構えを持つこと。
第三原則 <共感力>(Empathie)
見方を最大化させる「合理的利他主義」を保つために、<共感力>を養え。
心がけるべき事:
· 敵にしろ見方にしろ、彼らの文化・論証形式・存在意義を理解すること。
· 起こりうるすべての脅威の正体を突き止め、見方と潜在的敵対者を区別するために、彼らの行動様式をあらかじめ把握すること。
· 他者に対して常に友好的にふるまい、継続的な同盟関係を結ぶために彼らを迎え入れること。
· 「合理的利他主義」を実践すること。そのためには、きわめて謙虚にふるまい、他者の精神的自由を尊重する必要がある。
· 恥辱や怒りの感情を示すことなく、敵にも理があることを認められるようになること。
第四原則 <レジリエンス>(Resilience)
柔軟性に適応した者だけが、常に歴史を生き残る。<レジリエンス>を持て。
第五原則 <独創性>(Creativite)
弱点と欠乏こそが、自らの力となる。危機をチャンスに変えるための<独創性>を持て。
心がけるべき事:
· 自分が持っている資源が不足しているのなら、何が欠けているのかを理解し、不足を自分の進歩に変えること。
· 敵の力を、自己の利益に呼び込むこと。そのためには、ポジティブな思考力、運命の甘受の拒否、勇気、独創的な実践が必要になる。こうした美徳は、筋力トレーニングと同様に、日々の鍛錬が必要だ。
第六原則 <ユビキタス>(Ubiquite)
あらゆる状況に適応できる<ユビキタス>な能力を持て。
第七原則 <革命的な思考力>(Pensee revolutionnaire)
危機的状況に対応できない自分に叛旗を翻す<革命的な思考力>を持て。
「あなたが世界の変革を願うのなら、まずあなた自身が変わりなさい。」(マハトマ・ガンディー)
こうして<7つの原則>を見てみると、ありきたりなものが多いような気もするが、それが実践できているかどうかは別の話なのだろう。また、「第六原則」を守れれば、どうにかなってしまう。
有名な『7つの習慣』は以下。
成功法則の王道の書といえば、こちらの『7つの習慣』
読むのは簡単だが、なかなか素直に実践できないのが問題。「7つの習慣を実践するための小さな習慣」が必要。「成功法則を他人に教えること」が、実は「成功への王道」だったりもする。
一読に値する本。
そのほかの「書評一覧」へ