石川直樹さんを最初に知ったのは、「写真家・石川直樹」としてだった。しかし、本書を読んでからは、「旅の作家から写真にも領域を広げた石川直樹さん」という認識に変わった。
北極から南極まで、ほぼ人力によるプリミティブな手段で地球の半径を旅する「Pole to Pole」、世界7大陸の最高峰全てに登頂した旅人、この本を読むと、石川直樹さんは実に早熟な人であったことが分かる。
本書『全ての装備を知恵に置き換えること』には、46の文章が盛り込まれている。その多くが美しく輝く言葉で綴られ、時間が経過しても瑞々しさが感じられる。彼が扱っているのが、瑣末な時事ではなく、この「地球」とそれに対峙する「人間」という存在の関係性であるからなのだろう。
一つだけ残念なのが、費用の問題からか、本書の中の石川さんの撮影した写真が全てモノクロであり、それが写真本来の美しさを損なっている、あるいは魅力を十分に伝えきれていないのではないかという懸念があることだろう。モノクロとしておきたいものもあれば、カラーにしておきたいものもあっただろうに。
10年以上前の2005年9月25日に出版された本書は、いま読んでも色褪せない輝く内容であるばかりか、おそらく10年後に読んでも同じように「旅を愛する」人々を魅了してやまないだろう。彼が本書を出版した時には、まだ20代半ばだったというのも驚きである。彼が早熟だったから「世界を冒険」してきたのか、旅をしたからこそ早熟したのか、おそらくその両方なのであろう。
どこかで旅路が交わらんことを
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