寄藤文平さんの本を三冊ばかり手にする

 

 10年以上も前になるだろうか、非喫煙者である自分が『大人たばこ養成講座』をその面白さで買ってしまったのは。

 先日読んだ『絵と言葉の一研究』が、とても面白く示唆に富む内容だったので、寄藤さんの他の書籍も読んでみたいと思っていた。

 

 そこで、まだ手にとっていなかった『ラクガキ・マスター』『死にカタログ』『地震イツモマニュアル』の順番で読んでみた。

『ラクガキ・マスター』

 

 誰しも、「もっと絵が上手く描けたら良いな」と夢想したことはあるだろう。あの漫画の神様の手塚治虫でさえ、「もっと絵が上手く描ければね」と言っていたという。寄藤さんの伝える「絵を描く」ということは、「気軽に楽しみながらラクガキをしていこう」というアプローチから入る。ラクガキの際に姿勢などはどうでもよく、肩の力を抜いて、とりあえず描いてみようよ、というスタンスだ。

 

 しかし、さすがに第一線で活躍し続けるプロのイラストレーターだけあって、初心者の人々が描く際に気を配るべきポイントが、楽しいイラストと共に解説されている。読むのが苦にならず、逆に楽しく読み進められるように随所に工夫が凝らされているのも分かる。寄藤さんは「親切な人なのだろうな」ということが本書の全面から伝わってくる。

 

 具体的に初心者の「絵力」を向上させるトレーニングとして、毎日一ミリ間隔で10センチぐらいの直線(平行線)を50本描く、直径10センチぐらいの丸を50個描く、というようなイラストレーションの基礎力向上の練習も伝えてくれている。私もこの本を読んでから、平行線を縦横に筆記具を色々と変えながら描き、また丸を描いては用紙を横にしてみたりして「まだまだ横に楕円になっているな」と確認し、練習をしている。

 

 「直線、丸、円錐で大抵のものは描ける」という寄藤さんの言葉通り、絵の要素を分解してみていくと、大抵のものは直線・丸・円錐の組み合わせで描けてしまうのかもしれない。

 

 プロのイラストレーターのモノの見方や着想方が垣間見られる、良書であった。

『死にカタログ』

 

 人は誰しも死ぬ。私も、そして貴方も。老人はもとより、今生まれたばかりの赤子であっても、いつかは死ぬ。だが、健康で若い時に「死」を自分のこととして意識している人は少ない。まるで「自分だけは永遠に生きられる」かのように錯覚している若者が少なくない。

 

 寄藤さんも、実はそんな「ずっと自分は生きられるのではないか」と錯覚していた一人であったという。しかし、人生も折り返しを迎える彼は、ふと自分が「いつしか死ぬ生身の人間である」ということを意識し、その死と向き合うことに恐怖を覚えたという。そこで、この『死にカタログ』が生まれることになった。『死に方』と『カタログ』が合わさったのが本書のタイトルの所以であると、本書を読んで分かった。書名の説明はないが、多分そういうことだろう。

 

 

 まず、世界の人々が「死」をどう考えているのかに触れ、歴史上の有名な人物が死に向かっていく過程での人生の起伏を図解し、死の要因にどのようなものがあるのかを俯瞰していく。

 

 日本人の7割以上はすでに「病院で死ぬ」ようになっているという。そして、ターミナルケアへの注目はあるものの、その傾向はさらに顕著となっているようだ。つまり、多くの人は「死ぬのは病院のベッドで」という可能性が高いのだ。私も、そして貴方も。

 

 ほぼ全見開きにわたって巧みなイラストレーションにより、内容が図式化されているので、相当量の情報が楽しく目に入ってくる。

 

『地震イツモマニュアル』

 言わずもがな、日本は地震大国だ。日本の近くにはフィリピン海プレート、北アメリカプレート、ユーラシアプレート、そして日本から少し離れた太平洋プレートの4つのプレートがそれぞれに動き、海溝の歪みを作り出している。

 

 阪神・淡路大震災(1995)、東日本大震災(2011)、熊本地震(2016)といった地震とそれに伴う大津波。 首都直下地震(予想マグニチュード7.3)や南海トラフ巨大地震(予想マグニチュード9.1)が実際に起これば、それぞれ途方もないダメージを日本に与えることになりそうだ。

 

 

 「備えあれば憂いなし」とはいうが、阪神・淡路、東日本、熊本の大地震を見聞きした後では、なかなか「憂いなし」とまではいかないが、「防災に関して、やれるだけのことはやった」のと、「なんとなく考えるのを避け続けてきた」というのとでは、事後に大きな差がつくだろう。

 

 

 本書『地震イツモマニュアル』の内容は、「地震イツモプロジェクト」がその内容を担当し、寄藤さんはイラストレーションを請け負っているという形なので、いつもの寄藤さんの軽妙な文章というわけではない。より「地震に備えた実践的な手引書」という性格が強い。

 

 「食料や生活用具の備蓄」や「タンスや家具の固定」、どれをとっても「まだまだ改善の余地あり」というのが、大方の家の実情ではないだろうか。かくいう拙宅もしかり。まずは家具の転倒を防ぐ「つっぱり棒」などを幾つかネットでオーダーすることにした。「転ばぬ先の杖」的に。

 

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