物価の高い北京の無料観光スポット 3

 

 前回の物価の高北京の無料観光スポット2〜オリンピック公園

そして前々回の物価の高北京の無料観光スポット1〜国家博物館(国博)」

の続きです。 

 

 

 今回は北京市のやや郊外、市の北東に位置する798 芸術区」に関して。

 この芸術区がなぜ「798(チージウバー)」などという数字で呼ばれるかというと、ここにはもともと「第798工場」という電子部品の工場があり、その工場をリフォームして「芸術区」となったからである。

 

 798芸術区の開設当時、産声をあげたばかりの芸術区をリードしたのは、今でも健在な日本の「東京画廊」であると言われている。かつては数える程のギャラリーしかなかった798であるが、中国の現代アート・ブームと共に、周辺の工場もリフォームされ、大手自動車・オートバイ会社のオフィス、広告・デザイン・イベント企画会社がオフィスを構えるなど、今では歩いて周るにはかなり骨の折れる広さにまで芸術区は拡大している。

 

 2008年の初めての北京オリンピックの開催までに、北京の地下鉄網は急激な発展・進化を遂げた。毎年のように新しい地下鉄線が二本、三本とオープンし、その工事のスピードの速さには驚かされた。おそらく、トップ・ダウンで「ここに地下鉄を敷設する」と決めたあとは、地域住民とは交渉らしい立ち退き交渉はせず、ほぼ問答無用に立ち退きを強制(中国では土地は全て国家のもの)し、多くの作業員と大量の重機を昼夜問わずに投入、地下鉄の整備としては世界最速での工期であっただろう。

 

 その恩恵は、ここ「798 芸術区」も受けている。かつては北京市の中心部からタクシーやバスに乗って訪れなければならなかった798であるが、今日では地下鉄で「比較的容易に」アクセスできるようになった。「比較的容易に」というのは、798の最寄りの「高家園」駅がなぜかずっと開業せず、1キロ強ばかり南にある「将台」駅が最寄りなのである。北京にはこうした「開かずの駅」がいくつか存在する。計画自体も「世界最速」で行った結果か、採算がとれなさそうな駅はほったらかしにし、「オープンしない」ということもやってのけるのが「中国の地下鉄運営」である。

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 少し798の歴史を振り返ってみると、もともとこの798を有名にしたのは、そこに展示されている現代芸術作品ではなく、「毛主席万歳、共産党万歳」など、工場の壁に残された時代錯誤な毛沢東主席時代のプロパガンダであった。

 

 今日でも、いくつかのプロパガンダの標語は残されているが、それが本当にその時代のものなのか、あるいは新たに描かれたフェイクなのかを一目で判別することは難しい。

 

 さて、北京市の人口は急増している。20年ほど前の北京市の人口は、確か1300-1400万人ほどであったと思う。しかし、今日のそれは2000万人を超えるところまで増えており、新たな開発区の計画もあるので、いずれ3000万人都市となるのではないだろうか。

 

 不動産価格も20年前と比べると10倍以上に高騰しているところが多く、798芸術区のあるエリアも例外ではない。かつては「北京市の郊外」という位置付けであった798も、今では「どちらかといえばまだ都心」という位置付けに変わってきている。

 

 新たに北京にやってきた就労者の多くは、賃料の高い二・三環路の中に住むことは叶わず、四環路・五環路、さらにはもっと外にリーズナブルな価格の部屋を借りて住んでいるようだ。

 

 かつての798は「郊外にある寂れた工場跡地」であったので、空間が広い上に賃料も安く、芸術家のアトリエやギャラリーとして再出発するには最適な地であった。しかし、賃料・物価の高騰した今日の北京市では、若いアーティストが798にアトリエやギャラリーを構えることは、ほぼ夢話になっている。

 

 798にあるギャラリーの多くは、展示を無料で観覧することができる。中にはかなり質の高い内容のものもあり、そうしたものに偶然巡り会うことができると、芸術の神に祝福されたような気持ちになる。いくつかの現代芸術作品は、工事の廃棄物と区別がつかないようなものがあるのも、また面白いところである。

 

 

 さらに、ここ798には北朝鮮が運営するギャラリーが二つもあるのである。閉鎖的なお国柄を反映し、館内は写真撮影などが禁止であるが、北朝鮮のアーティストたちが、どのような状況に置かれているのかを垣間見ることができる、貴重な場所である。

 

日本にはない規模の芸術区。