北京・上海と香港の地下鉄に見る基本理念の差

 

 北京の地下鉄網は2008年の北京オリンピックを界に急激に整備が進み、今日では世界でも地下鉄網が発達した地域となった。同様に2010年に万博を開催した上海でもそれを契機に地下鉄の整備が一気に進み、上海の街には総延長距離で東京を超える程の地下鉄網が整備されている。

 

 かたや、イギリスの統治下時代に一足先に地下鉄が引かれていた香港では、そう目立った地下鉄の延長工事はないのであるが、それでも北京・上海、そして香港の地下鉄を乗り比べてみるとその「乗客サービスの基本理念」の違いがはっきりと肌で感じられる。

 

 さて、香港の地下鉄は新しい路線は無いものの、利用客が各路線の接続をスムーズに行えるように設計されている。多くの乗客が向かうであろう乗り換え路線が、降りたホームのすぐ反対側に乗り付けているように設計されており、多くの乗客はそう長い距離を歩かなくてもすぐに目的の路線に乗り換えることができ、「地下鉄設計者の基本理念」が「利用者へのサービス」であることを感じられるのだ。その接続のスムーズさは利用してみると本当によく考えられていると感じられるものであり、中には日本の地下鉄よりもずっと利用しやすいと思える場面も多い。

 

 そして、香港とは対照的に巨大な地下鉄網を有する北京や上海は、利用者の便を殆ど考慮に入れずに「政府の上の方から言われて、そこに作らねばならないから作った」という「パッチワーク型の設計」、「やる気ないけど上の命令なので仕方なくダラダラ従った感のある設計」である。

 

 特に顕著なのが北京の「西直門」や「東直門」の接続であり、乗客は乗り換え路線へと向かう為に長い距離を歩かねばならず、体力の低下した老人、妊婦や怪我をした人々、障害のある人々には乗り換えだけで疲れてしまうような代物だ。ここでは日々、地下鉄利用者が乗り換えのために時間と体力を浪費している光景が見られる。

 

 普段、地下鉄やバスに乗らず、専用のハイヤーで移動する政府幹部たちが指揮をとった結果として、「乗客の利便性など全く考えられていない、ぱっと見の見栄えだけ良い地下鉄網」がそこには出現することとなった。

 

 「顧客のために」というサービス提供の視点が、欠如しているか著しく低い中国大陸の人々が、世界の人々を納得させるサービスや商品を作れるようになるには、まだ長い時間を要する。

 

 それは「地下鉄駅の接続の設計」ひとつとっても、よく表れている。中国製のコピー製品の品質は世界に出しても恥ずかしく無いものと既になった。IT分野では中国発の高い品質やサービスや商品で勝負できるようになりつつある。

 

 しかし、地下鉄などのハードウェアと、その利便性を担保するOSソフトウェアの連携はまだまだぎこちない。携帯電話やコンピュータ、ドローンや各種アプリなどで中国発の製品・サービスが受け入れつつあるが、顧客の視点に立った視点で成功しているサービスは、どれも民間の大手IT企業が率先して進めているものであり、そこに国(政府)が口を出し始めると、ろくなことにならないのが「中国という名の病理」である。

香港、頑張れ! 香港、加油!

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