マカオには、素敵な町角がある。

 

 マカオにて、現地在住の友人に連れられ、大型ホテルの無料送迎バスと有料路線バスを駆使し、マカオの中を6時間ばかり駆け足で見て周った。やはり地元を知悉する友人が一緒だと動くのが楽だ。たったの6時間の滞在でも、自分だけなら2日はかかるような工程をスムーズに移動し楽しめた。

 過去にもマカオには、まだ物価の安かった頃から数回訪れたことがあるので、歴史地区や有名ホテルなど主要な場所はほぼ観たことがあった。今回はかつて観たのと重複する場所とは別に、マカオの最南端にある路環(COLOANE)地区に足を踏み入れてみた。この路環の西端、中国本土の珠海と向き合った場所に、古き良き漁村の雰囲気を残す街角がある。

 

 香港の南西にも素敵な漁村があるが、ここマカオにもさらに小さな町角があった。

 路環の西端には、「十月初五馬路」という名のロマンチックな名のついた路がある。中国本土の大都市では、「北京路」「上海路」「南京路」「桂林路」など、中国の有名な場所の地名がその名に付けられた御決まりの路名しか見ることができず、残念ながら、その街ごとの風情のある名称の路はほとんどない。

 

 中国大陸でも、かつてはその街ごとに風情のある地名や路名が各地にあったのであろうが、中国という国は皇帝や朝廷が変わるたびに過去を否定し、自分たちの文化をことごとく放棄・破壊してしまう悪い癖があり、今日の中国は「広くて人口が多いだけの、土着文化が希薄な空間」に近づいてしまっている。

 しかし、諸外国に一抹の期間占領・割譲されていたマカオや香港には、まだそれぞれ諸外国の影響を受けた独特の地名や路名が残っており、かろうじてではあるが、古き良き中国と諸外国との交流の「エスニックな風情の残り香」を嗅ぐことができる。

 

 諸外国に占領・割譲されていた土地の方が、かつての中国らしい文化を見られるというのは、皮肉であるが、実際に中国からアジア各地に旅行するようになった大陸人をしても、台湾や日本に旅行に行くと、中国本土で見られなくなった「大陸から渡ってきた中国古来の文化の片鱗」に郷愁を覚えているのである。

 中国本土の珠海に面した「十月初五馬路」から細く小さな路地には、またそれぞれ異なる名称があり、どんな名前の路地なのかを観て歩き周るだけでも楽しい。このエリアにはまだ短期の観光客はそう多くなく、来るのは地元民か長期のマカオ滞在者が多いのだそうだ。

 

 大陸からの団体客を詰め込んだ大型バスが訪れ、旗を持ったガイドや同じ帽子をかぶった集団がここを蹂躙しないことを願ってやまない。彼らがくると、本人たちにその気はなくとも、どんな場所でも雰囲気を台無しにしてしまうのだ。

 次回、「十月初五馬路」を訪れる際には、ここで地元民に混ざって食事をしようと思う。今回はエッグ・タルトの有名店Lord Stow’s Bakeryでタルトとカフェ・ラテだけテイク・アウトし、中国本土の珠海を眺めるのみにとどめておいた。

カジノだけでない、マカオ。