死者を想う、『リメンバー・ミー(原題:COCO)』

 アカデミー賞のアニメーション映画賞、そして主題歌賞を受賞した『リメンバー・ミー(原題:COCO)』。多くの国では2017年末に公開されていたが、洋画の公開が世界のお尻の方に並べられている日本では、本日ようやく封切りとのこと。

リメンバー・ミー(原題:COCO)

 

1h47 / Animation, Adventure, Comedy / 21 November 2017 (USA)  

 

 

 アカデミー賞を二部門受賞するなど、後付けの宣伝材料としては「公開は遅いほど良い」という「大人の事情」があるにしても、世界的にみて高い映画の観覧料金を払っている日本の観客を待たせるのは、やはりどうかと思う。

 

 昨年末、広告映像が美しく気になっていたこの『リメンバー・ミー』を母と一緒にタイ王国で観た。久々に母と一緒に映画を観た。3D版を観たのだが、母は「初めて3Dで映画を観る」と言っていた。母が初めて観た3D映画がこの映画で良かったと思う。

 本作はDisney/PIXARが「死」を真っ向から扱った作品。それでいて暗さが全くない。むしろ明るく希望が持てる世界観が広がっている。

 

 死者が一年に一度、現生の子孫たちに会いに帰ってくる日がある、という「お盆」のような設定は、日本人にもすんなり受けいれられるだろう。

 

 原題の『COCO』とは、主人公の少年ミゲルの「祖母」の名前である。祖母COCOは年老いて身体が弱り、記憶も曖昧となってきているのだが、この物語ではキー・パーソンの一人となる。

 

 日本では『リメンバー・ミー』とかなり直接的なタイトルにしているが、観終わった後でより味わいがあるのは、『COCO』ではないか。祖母へのリスペクトと温もりを感じる。

 劇中歌の「Remember Me」はアカデミー賞を受賞するだけあり、耳に残り泣かせる良い曲である。歌というのは不思議なもので、「音楽」や「詩」がそれぞれ単体では大したことがないものでも、二つが上手く合わさると、とてつもない相乗効果をもたらす。

 

 日本を代表する詩人の一人、谷川俊太郎さんが『歌の本』の巻末あとがきで、<言葉は音楽に恋している>と書いている。また「私の書いた言葉に歌の翼を与えてくださった作曲家、歌手のかたがたに心から感謝しつつ」とも。

 

 

 『リメンバー・ミー』本編の前に、『アナと雪の女王(Frozen)』でおなじみのアナ雪の短編がプレゼント的に同時上映される。なんと、これがいつものDisney/PIXARのオマケ作品よりも長く、20-30分はあるのだ。すでに「短編映画」として独立できる長さとクオリティーであった。

 

 昨年末の公開当時には、世界のアナ雪ファンにとって、嬉しいクリスマス・プレゼントであったことだろう。日本公開はほぼ春になっているのは興ざめだが。

 

 この映画では、「死者の国」がなんとも妖艶で美しい。広告ポスターにもその美しい景観が使われていた。物語の設定はスパニッシュな国での話であるが、これがアジアやロシア、はたまたアフリカであったらどのような物語になっていたかと気になる。

 

 「死者は現生に生きる人々に忘れられると、死者の国からも消えていく」という設定は、何とも悲しい。そして、それは一応理に適っている考え方である。「死者の国」とは、現生で生きる人々の心の中にあるのだから。

 

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最後に慣例の25点評価をしておこう。

 

 

リメンバー・ミー(原題:COCO』(2017

 

Visual: 5

Performance: 4

Screenplay: 5

Sound & Music: 4

Originality: 5

合計25点満点で23点!

 

 

 観終わって3ヶ月ほど経つ。いまだに主題歌の「Remember Me」は耳になんとなく残っている。ユーチューブで日本語吹き替え版のトレイラー(広告)を観たのだが、こちらの「Remember Me」は正直なところ「いまいちだな」と感じた。ぜひ英語・スペイン語版    の「Remember Me」を楽しんで欲しい。

 

 ビジュアルは全編を通して美しい。子供たちよりも老齢・高齢者の心にも、幅広く響くものがある作品である。

 

 この作品は、子供達よりも、ある程度人生経験を積んだ年齢の方々にこそ、「アニメーションだから」と嫌厭せずに観て欲しい作品だと感じた。「どうせ子供向けのものなのだろう」と色眼鏡をかけず、「良いものは良い」と素直な眼で観て欲しい。 惜別を多く経験した人であればあるほど、胸にくるものがあるだろう。

帰ってきても、いいんだよ。