弱者にわりに寛容な「上水」の市場

 香港メトロの「上水」駅からすぐの場所にある、「石湖墟街市(石湖墟市場)」について書いています。

 

 三階建の石湖墟市場は、区画ごとにお店が賃料を払ってそこに入居する形をとっているように見える。地上階の生鮮食品、二階の野菜や花、三階のフード・コートに至るまで、基本的に区画ごとの賃貸でお店が入居する形態だ。自分は借りたことはないけれど。

 

 石湖墟市場を観て回って、満足して地上階のエントランス近くの椅子に腰掛けていると、一人のおばあさんが入り口近くで菜っ葉を売っているのが目についた。よく見ると、何人かお仲間もいるようである。

 区画ごとに賃料を払って入居しているお店からすると、「集客している自分たちを差し置いて、ここで無料で商売をするのはけしからん」「衛生上管理できないのが問題だ」となるのが日本的な感覚であると思うが、それは香港。お店の人たちもお客の多くも、おばあさんたちが小さな商いをしているのを咎める様子はない。

 むしろ、区画ごとのお店を素通りしていく人が多いのに、菜っ葉を売るおばあさんたちから商品を買っていく人が意外に多いことに驚く。

 

 無論、石湖墟市場の管理事務所の人々に見つかれば、「おばあさん、ここで商売しちゃいけないよ」となるのであろう。しかし、そんなことすら気にしない胆力の備わったおばあさんたちは、慣れたような感じで、勝手に石湖墟市場の暖簾、というか敷地も無料で借りて商売をしているのであった。

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 10分ほどの間にも、おばあさんたちの売る菜っ葉はみるみる売れていたので、得意客がついている様子である。美味しいのか、はたまた安いのか、その両方なのか。石湖墟市場のお客たちも、「安くて美味しければ、いいじゃない。おばあさんたちの助けにもなるし」という感じである。

 何でもかんでも杓子定規に取り締まると、息が詰まる。このおばあさんたちの例はやや極端ではあるけれど、それすら受け入れられる、香港の大方の人の感覚というのは、行き詰まった国々の「閉塞感を抜け出すヒントの一つ」になるのでは、と感じられるほどであった。

 

 

 おばあさんたちが勝手に商売をしている香港の石湖墟市場。通りすがりの旅人の目には、彼女たちもこの「ローカル感たっぷりな石湖墟市場」という劇場を彩る大切な端役なのである。

 

 

 自分が区画を借りて商売をしている野菜屋だったら、とても嫌な「おばあさんたち」ですけどね。

 

 

中国人のおばさんはアウトロー