ジャカルタの記憶に残るレストラン、ヒストリア

 

 前回「インドネシア:人形博物館(ジャカルタ)」からの続きです。

 

人形博物館(Wayang Museum)だけでなく、ジャカルタ・コタに足を運ぶと、空腹を満たしたり、強い日差しを避けたり、雨季には雨宿りをするために、決まって訪れるレストランがある。それは人形博物館(Wayang Museum)から数十メートル南側に行ったところにある、ヒストリア(Historia)だ。

 

 

知名度で言うと、ファタヒラ広場の北西に面する「カフェ・バタビア(Café Batavia)」の方が上であるが、ここは客席間の空間が狭く、料理・飲料共に過度の価格付けでもあったので、一度だけ現地の知人と訪れてから全く行かなくなってしまった。

 

では、「ヒストリア(Historia)」はどうかと言うと、こちらもインドネシアの物価を考えると、観光地価格となってはいる。しかし、座席間が広く、居心地は遥かに良い。さらに、座席間が広いだけでなく、客足も少なめなので、さらに快適に過ごせるという魅力がある。

 

ヒストリアでは、カフェ・バタビアのようにテーブルが埋まっていることはほとんど見たことがなく、座席の占有率は30%程度ではないだろうか。数回訪れただけの、個人的な体感値ではあるけれど。

 

 

ヒストリアには、その名にあるように、ジャカルタ・コタやインドネシアの植民地時代の歴史がほんのり感じられる建物に、センスの良い内装が施されている。壁にかかっている絵や店内に置いてある小物も、この地の歴史を感じさせるもので統一されている。

 

友人や家族と共に、また一人旅でもコンピュータを小脇に抱え、何度かこの店で時間を過ごした。私個人という「短い人生のその時」の中にも、この店で過ごした短いけれど美しい時光が、その時の同席者、店の雰囲気や食べたものの記憶と共に、しっかりと刻まれている。(チリが食べられない私の場合、ここでは大抵「ナシ・ゴレン」や「ミー・ゴレン」しか料理は頼まないので、その出来がどうだったかなのだけれど。料理人によって味が濃かったりするという波がある)

 

 

インドネシアの首都ジャカルタは、「世界でも最速で沈みゆく街」である。「温暖化による海面上昇」と「市民の井戸水の濫用による地盤沈下」により、かなりの速度で沈んでいる。政府も打つ手がないのか、「2025年を目処に、政府は別の島に移転する(逃げ出す)」というのがインドネシア流の対処法である。(全く対処になっていないが。)

 

あと何度、沈みゆく街にあるヒストリアで時を過ごせるか分からない。しかし、またジャカルタを訪れる機会があれば、闇夜の光に引き付けられる夜光虫のごとく、かつての美しく儚い記憶を彷徨い、フラフラとヒストリアに向かってしまうのであろう。

経営方針が変わらないと良いけれど。

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