ジャカルタのガンビエール駅の向かい側に、インドネシアの「ナショナル・ギャラリー」はある。白亜のコロニアル風の建築が何棟か並ぶナショナル・ギャラリーは、初めて訪れると「お!ひょっとしていい感じかも」と期待を掻き立てる。

しかし、そこはインドネシア。「建物はそれなりに立派でも、中身は中途半端」というのが、この「国立展覧場(ナショナル・ギャラリー)」である。
ナショナル・ギャラリーに到着すると、何棟も建物が連なるので、「これはひょっとしたら見甲斐があるのかな」と期待してしまうのだが、そのほとんどが事務室か会議室などであり、「常設のギャラリー」としてオープンしているのは、ここのほんの一角である。

荷物を必ず預け入れる必要があるが、入場無料なのは「まぁ、頑張っているのかな」という気がする。だが、肝心の展示がなんとも少ない。また、展示内容がほとんど変わらない「常設展」なので、二度・三度足を運ぶと、すぐに観るところがなくなってしまうのである。
コンテンポラリー・アートのコーナーには、それなりに面白い作品があるのだが、ここもスペースが限られているので、これらもあっという間に見終わってしまう。おそらく、来場者のほとんどは、不完全燃焼な感じのままでこのナショナル・ギャラリーを後にすることになる。ギャラリー・ショップの機能も驚くほど無いに等しい。
せめてもの慰みは、ナショナル・ギャラリーの敷地の中に、猫が自由に暮らしていることであろうか。ジャカルタは思い切りイスラム圏なので、野良犬はほとんど目にすることがないが、猫はそこかしこで自由に暮らしている。

ギャラリーの敷地内にあった売店で、ミー・ゴレン(インドネシアの焼きソバ)を食べていると、ものすごい勢いでお腹を空かせた黒い子猫がやってきた。「何かくれ!」と足元で猫好きの自分をコントロールしてくる。ミー・ゴレンのトッピングの目玉焼きの破片を少しあげると、「全然足りない!子猫だと思って馬鹿にするな!もっとくれ!」と催促してくる。
ミー・ゴレンの「焼きソバの部分」は人間が食べ、「目玉焼きの部分」はほとんど猫に食べられてしまった。次回、ナショナル・ギャラリーを訪れる時には、猫の餌を持って行こう。ギャラリーに行っているのだか、猫に会いに行っているのだか、ナショナル・ギャラリーを立ち去る時には、その印象が「猫のいる芸術っぽい場所」となっていた。
猫だけでなく、ギャラリーにも頑張って欲しい。