インドネシアが恋しい季節

 

 東南アジア諸国連合(ASEAN10カ国のうち、9カ国は北半球か赤道直下に位置している。例外は、インドネシアだ。

 

 一万三千島あまりの島々で構成されるインドネシアは、東南アジア諸国の中では例外的に、南半球にそのほとんどの島がある。北半球と南半球では季節が逆転するので、東南アジア各国が長い雨季の時に、逆にインドネシアでは乾季の良い季節となっているのだ。5月から10月まで長い雨季に入る北半球の東南アジアとは裏腹に、ほぼ同時期が乾季なのである。

バリ島のクタ・ビーチ
バリ島のクタ・ビーチ

 

 初めてインドネシアの地を踏んだのは、シンガポールからフェリーに揺られて1時間ほど、バタム島の東にあるビンタン島に数日行った時のこと。一緒に行ったシンガポール航空で働く友人が全て按配してくれて、いつも全ての行程を決めている自分にしては、かなり受け身のリラックスした旅であった。

 

 ビンタン島はリゾート地であったので、あまりインドネシア土着の文化的なものを体感する機会はなかったのだけれど、海の美しさだけは良く覚えている。

 そして、二度目のインドネシアは、バリ島である。世界中の人々を惹きつけてやまない、インドネシア最強の吸引力を誇る島であると言っても過言ではないだろう。かのデビッド・ボウイが「自分の遺灰はバリ島に撒いてほしい」と言い残したとも伝えられている。

 

 島の東西南北にいくつもある性格の異なる美しいビーチ、ウブドの神秘的な宗教芸術と建築群、本家インドから独特の発展を遂げたバリ島のヒンズー教芸術、棚田の眩しく美しい風景、金の亡者と化した一部のバリ人たちを戒めるかのような活火山群、 島の各地にひっそりと神々を祀る寺院群、そして神々に捧げるガムランの音色とバリニーズ・ダンス。

 

 バリ島のクタでまず宿泊したホテルの朝食に、見慣れないフルーツがあった。固くしっかりとした実である。Salak(サラク)という名のそのフルーツは、通称スネーク・フルーツと呼ばれる通り、実の外側を包む表皮が蛇の皮のようである。爪を立てて皮を剥いてみると、中からは白く酸っぱい果実が現れる。その中央には、これまたしっかりした黒い種が入っているので、あまり勢いよく噛み付いてはいけない。剥いた後の皮は、脱皮した蛇皮のように見える。

 サラクの写真を撮って、バンコクで暮らすインドネシア人の友人に「面白いフルーツ見つけた」とメッセージを送ると、すぐに返信があった。

「サラクね。酸っぱくて美味しいでしょう。でも、食べ過ぎには注意してね」

「なぜ?」

「オナラが出るから」

とのこと。

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 以来、インドネシアを訪れる度に、友人の言葉を想い出し、「食べ過ぎちゃいけないな」と思いながら、インドネシアの暑い日中をやり過ごすパワーを貰うために、各地でサラクをカリコリ、カリコリと齧歯動物のように齧るのが日課となるのであった。

 

 

 

 インドネシアが良い季節を迎える。そろそろ、サラクをカリコリやりに戻りたい。

 

 

 

カリコリ