ラオスの古都ルアンパバーンについて書いています。
前回「コウアンクシーの滝」を紹介しました。今回はその続きです。
コウアンクシー滝を訪れる大多数の観光客は、最大の見所である比較的大きな滝を観た後、満足してルアンパバーンの町へと帰路につく。しかし、全体の1割以下か5%程度の旅人たちは、さらに上流に遡る道を選ぶ。

大きな滝の側、雨季には滑って登れなそうな急な脇道を登ること数百メートル、開けた平地にたどり着いた所に、見落としそうなほどに小さな「洞窟3km」の標識がある。
木々の間を森の空気を満喫しながら進むと、所々で美しい景色が観られる。そこには滝のそばのような多くの観光客はおらず、ほぼ貸切の景色を堪能することができる。


初めて歩く山中の3kmというのは、初めて訪れた街中の3kmよりもずっと長く感じる。舗装されておらず、雨季には歩くことが相当に困難であろう凸凹の道を歩いていると、見たこともないような蝶が飛んでいたり、木々の間から人間を警戒する蜂たちの羽音が聴こえてくる。


ほとんど標識のない山道を歩いているうちに、「本当にこの道で良いのだろうか」と心配にもなるのだが、たまに洞窟や源泉から折り返してくる旅人たちとすれ違うと、自分が歩いている方向が正しいのだと分かる。
帰路につく旅人たちの顔は、「少なくとも、自分たちは最後まで歩き通した」という満足そうな顔をしており、これから洞窟と源泉に向かう旅人たちを同士として見ているのが感じられる。

いよいよ、洞窟と滝の源泉にたどり着く。
洞窟の入り口には、仏陀や蛇の像があり、入場料1万キップを払って懐中電灯を借り、100メートルばかりの真っ暗な洞内を探検することになる。懐中電灯の灯りだけが頼りの洞内には、これまた見たこともないような大きな昆虫が地面を歩いていたり、どこかで大きな羽音を立てていたりする。


太古の頃から、暗闇というのは人間の恐怖心を煽る想像を掻き立てるようで、「こんなところで吸血コウモリや蛇などに遭遇したくないな」「懐中電灯の光めがけて大量の虫が飛んできたら嫌だな」などと考えていると、一歩一歩、洞内に進む足取りが重くなってくる。

数人の友人たちと一緒に来ているのならまだしも、一人でここを訪れる旅人には、自分の度胸を試すのに相応しい洞窟だ。恐怖心を笑ってごまかすこともできない。短い洞内には、仏陀の像やどれほどの歴史があるのか解らない簡単な壁画などがあるだけだ。洞窟の最大の見所は、「得体のしれないものが潜んでいるかもしれない、何も見えない暗闇」である。「見所が眼に見えない闇」というのは、矛盾しているけれど。



真っ暗な洞窟を後にすると、50メートルばかり離れたところに、滝の源流となっている源泉がある。ここの泉では綺麗な苔が水中をそよぎ、源泉のそばで食事などもできるような食事処があった。店の主人に「一日に何人ぐらい客が来るの?」と聞いてみると、「30−50人ぐらいかな」とのこと。コウアンクシーの滝には毎日数百人から千人ぐらいの客が来ていそうなので、やはりほんの一部の人々だけが訪れる場所のようだ。
ちょっと物好きな旅人は、こうしたところでも食事を摂らずに通り過ぎる人も多い。入場料をとる訳でもなく、どうやって食事処を維持しているのか、後から考えてみると謎の食事処であった。



行く人が少ないので、需要も少ないかもしれませんが、あと二回ほど続けて、ラオスについて続けて書いておきます。
万人向けではないけれど
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