ラオスのバンビエンの楽しみ

 

 ラオス北部、人口25000人ほどの小さなバンビエン(Van Vieng)の町は、自然と他の旅人との邂逅を楽しむバック・パッカーで溢れている。

 

この町の東を南北に走る国道13号線沿いには、かつての米軍の飛行場の滑走路跡が剥き出しで鎮座し、そこから西側のナム・ソング川にかけて安宿や飲食店、マッサージ店が集まった地域が形成されている。

 

 首都ビエンチャンから車で3時間程揺られて到着する頃には、ラオスの主要な国道であるはずの13号線に対する信頼は、すっかり失われている。首都と近隣の町をつなぐ幹線道ですらとてつもなく凸凹なのだ。車に酔いやすい人には、ラオスの車での移動は相当にしんどい旅路になるが、それも少し経ってみると、楽しい想い出に変わるというから不思議なものだ。

 

 北の古都ルアンパバーンとバン・ビエンの間は、車で57時間かかるが、高低差が激しく曲りくねった凸凹の山道は、地元ラオス人でも酔う人が多い。いやむしろ、世界中から集まる旅人よりも、旅慣れていない高地ラオスのラオス人の方が、酔う人が多いのが実情である。

橋ですれ違った犬に微笑まれた。
橋ですれ違った犬に微笑まれた。

 

 バンビエンの町で人気のある川遊びのアクティビティは、ブルー・ラグーンでの飛び込みと、ナム・ソング川を黒い巨大なタイヤ・チューブで4kmばかり流れてくるチュービングである。

 

 そのチュービングの終着点に、三角州となっているサイソン(Saysong)という名の陸地があり、山向こうに沈む夕日を眺めながら、まったりと酒を飲み語るのに適した場所がある。

 

 

 旅路で知り合った中国人の二人旅の仲間を誘って、川辺に繰り出した。



 ジェニーとタイガーは陽気で気持ちの良い中国人。中国語以外の言語には明るくないので、中国語が使える人とだけしか仲良くなれない典型的な中国人なのかと思っていた。しかし、実は二人は妙な英語で言葉が片言しか通じなくとも、気後れせずに、どんどん友人を増やす友好的で行動的な旅人達であった。



 彼らとは中国雲南省のラオス国境沿いの町で「旅仲間」として知り合い、国境越えの仲間となり、そのままラオスを南へと一緒に旅路を共有していた。

 

 

 さて、二人とは北部のルアンナムター、ルアンパバーンと泊まっている宿は別なのだが、小さな町を歩いているとばったりと出くわしてしまい、また別の町へと移動するのもなぜか一緒の工程となっていた。そしてついに、バンビエンにて同じ宿に投宿した次第である。



 

 ジェニーとタイガーは、夜の910時になると、地元で最も人気のある「サクラ・バー」という名のバーに繰り出しては、片言で欧米人に混ざって酒を飲み踊り、酔った客をひっかけようとするオカマたちをひやかし、深夜3時頃になって眠りにつき、酷い二日酔いで目覚めた翌朝には「もう飲まない」と言いながら、その夜にはまたサクラ・バーに繰り出すという典型的なバック・パッカーの生活を楽しんでいた。



 中国大陸ではVPNをかませないと使えない彼らのフェースブックの友人登録数が、大陸から出るとみるみる増えていくのも、彼らの友好的で行動的な性格による。

 

 東南アジアの飲み屋には、「バケツ酒」を置いてあるところがある。ビール、ライム、安物の地元のウィスキー、スプライト、コーラなどをプラスチック・バケツで混ぜて出来上がる「バケツ酒」は、かなり乱暴な見てくれのカクテルだ。数人のグループでは、個別のドリンクをオーダーするお行儀の良い飲み方よりも、友人たちとストローを何本か挿してバケツ酒を回し飲みするのはなんとも楽しいものだ。一人でこれを注文する人は相当に変わっているけれど。



 ジェニーとタイガーは、中国大陸では余り見なかったこの「バケツ酒」のシステムが気に入ったらしく、自分を入れた3人でこの酒を廻しのみ、旅路が交わったことを喜んでくれた。

 

 夕暮れ時になって、唐突に空に気球が現れた。トルコのカッパドキアのように数十もの気球が飛んでいるような壮観さはないが、ナム・ソング川すれすれまで下降してくる気球は、夕暮れ前から川縁で呑んだくれている旅人の目を覚ますのに足る、素敵なサプライズであった。

天真爛漫な雲南娘のジェニー
天真爛漫な雲南娘のジェニー

 

 

バケツ酒は楽しいが酔いやすい

 

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