ミャンマー:行商の老婆を気遣うミャンマーの若者

 

あと何回かで、ミャンマーについてのブログに一区切りをつけ、残りのミャンマーについての話は電子書籍という形に仕上げたいと思います。ということで、ブログ形式でのミャンマーの記事は後数回になりますが、よろしくお付き合いください。

 

 

それでは、前回のブログ「ミャンマー:味わい深いローカル市場を歩く」からの続きです。

 

旅人ローゼンと私がミャンマーの古都バガンにて観光の合間に英気を養う場所にしていたのが、ニャウンウーの宿のすぐ向かいにあったレストラン「Weather Spoon’s Restaurant and Bar」である。壁には世界各国からのお客の寄せ書きが所狭しと書き込まれ、おしゃれで綺麗なお店というわけではないが、旅の情緒を醸し出す場所であった。2013年に訪れた時にも、すでにバガンの人気レストランとして名を馳せていたが、その後より間口の広い店舗に移転し、お店の外にまでウェイティングの客が溢れるほどの繁盛店になったようだ。

まだウェザー・スプーンが小ぶりな店舗であった当時、朝食、昼食、軽食、夕食と1日に何度もこの店舗に足を運び、出てくる食事や珈琲の水準が、バガンの小振りなお店にいることを忘れさせてくれる程のものであった感動を今でも懐かしく想い出す。何を頼んでもハズレということがなく、途上国のレストランの珈琲でよくあるような、粉末のネスカフェをお湯に溶かしたものが出てくるようなこともない。バガン地区のニャウンウーにありながら、イタリア・ブランドの珈琲を輸入して出しているミャンマーの小さなお店の店主のこだわりは、今思うと大変なものであったのだろう。

ある時、ウェザー・スプーンのテラス席に腰掛けていると、行商の老婆がお店のすぐ前に腰を下ろした。彼女が商うのは、「計り売りの豆」のようである。ウェザー・スプーンのお客がその場で買ってすぐに口にできるようなものではなく、ちゃんと調理をしないといけない食材の計り売りのようであった。

 

老婆が店先で腰を下ろすと間も無く、お店のオーナーの若者がすすっと店先の老婆の横に現れた。一言二言会話をし、老婆は慣れた手つきでウェザー・スプーンの店主に計った食材を渡し、店主は店主で「いつもの食材の調達」という感じで店の奥に消えていった。

 

そのやりとりを側から見ていて、「やはり、ミャンマーの市井の人たちって温かいなァ」と感じ入る。2021年の今日、権力や腕力にものを言わせ、暴政を敷いているミャンマー軍の高官のような人々もいれば、それほど裕福ではないけれど、お互いにできる範囲で労りながら暮らしているミャンマーの一般人。市場で買えばより安く手に入りそうな食材ですら、店先にやってきた行商の老婆を邪険にすることなく、お金を払って入手する心の広さを持つ小店舗の若い店主。その一連の絵巻物のような自然な流れが、美しいミャンマーの人々の大切な記憶として、バガンの旅から何年もたった今も記憶の底に残っている。

 

そうこうするうちに、老婆はウェザー・スプーンの若い店主に食材の販売を終えると、すっと立ち上がり、その年齢を感じさせない軸の通った体躯を整え、頭の上に商売道具一式をさっと載せ、天狗か何かが憑依したように颯爽とその場を立ち去って行ったのは、軽い驚きを覚える光景でもあった。

 

 

次のブログ「バガンのアナンダ仏塔を訪ねる」に続けます。

 

みんな、どうか元気で。

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