ミャンマー鉄道の特殊性

 

 以前、「ミャンマー鉄道は、日本とつながっているのか。」でも書いたが、ミャンマーの鉄道事情は、インドのそれと同等かそれ以上に特殊な面を持つ。(インド鉄道の場合は、インドの人々に起因するソフト面での特殊性が多いのだが、ミャンマー鉄道の場合は、システムに起因するハード面の特殊さがある。)

 

 今回は、ミャンマー鉄道の中長距離列車の特殊性に関して、もう三点ばかり追記しておこう。

(1)切符の購入のタイミングが特殊

 

 ミャンマー鉄道(中長距離)の乗車券は、乗車前日までに購入できる「前売り券」と、乗車当日購入することができる「当日券」とが販売されている。どちらも駅の窓口で買うことには変わりがないのであるが、「当日券」の販売のタイミングが特殊なのだ。

 

 どう特殊なのかというと、当該列車の「発車予定時刻の1-2時間前にならないと発売しない」のである。実は、これがなかなかに不便なのだ。

 

 当然、前日までに前売り券を購入していないと、当日券を買わなければならなくなるのだが、「発車予定時刻の直前」まで発売されず、「残っている座席分のチケット枚数が不明」であり、「残り座席が売切れてしまうと、当該列車に乗れなくなる」のである。

 

 しかし、「外国人が乗れなくなるとかわいそう」という理由で、現地人と外国人との発券場所を別にしている駅もあり、外国人は比較的チケットを入手しやすい状況にはあるが、それでも売切れてしまうことはある。路線バスなど他の交通手段の料金と比較すると、ミャンマー鉄道の料金は圧倒的に安いので、時間に余裕があり節約したい多くの現地人は、鉄道で移動することを選択する。

 

 

 ということで、ミャンマー鉄道で中長距離の路線に乗る際には、できるだけ前日までにチケットを押さえておく事をお勧めする。

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(2)列車がとてつもなく揺れ、窓は全開。

 

 

 ミャンマー鉄道が「やたら揺れる」ことは有名である。植民地時代のイギリス統治下の鉄道網をそのまま使っているのはいいとして、独立後に「一度も補修をしたことがないのでは」というぐらいに列車も線路もガタがきているのである。

 

 恐ろしいことに、区間によっては、枕木が摩耗して無くなっている線路もある。もうここまでいくと、鉄の棒が二本置いてあるだけだ。列車の整備も長いことされていないので、「凸凹な線路」の上を「クッション性の乏しいガタがきた列車」が走っているという具合になり、その振動は乗客にもれなく還元される。乗車中、寝て過ごそうにも、猛烈な揺れが断続的に襲うので、揺り起こされる。ロック・コンサートの会場でもないのに、いやでも乗客全員でヘッド・バンギングをしていることもある。時折、座席に座っているはずなのに、急に体が宙に浮いたりすることもある。

 

 さらに窓が全開なので、温かい(というか暑い)日中の列車はまだ良いが、夜になると風で体温が奪われていく。寒風で風邪をひく人もいるだろう。ミャンマー鉄道になれた現地人が、冬支度のような格好で列車に乗り込むのはそのためだ。

 

 ヤンゴンとバゴー間の2時間程度の比較的近距離の移動には、試しに乗ってみるのもいいだろう。しかし、マンダレーからバガンなどの6時間以上かかる区間は、かなりの苦行となる事を想定しておかないとならない。

(3)ミャンマー全土、ほとんどの駅にトイレがない。

 

 先日、バゴー駅からヤンゴン駅に短距離の移動をした。(1)で書いたように、発券まで待ち、すぐに「外国人用窓口」にて、現地ミャンマー人が長蛇の列をなしているカウンターの後ろから「外国人特権」で割り込むようにして乗車券を購入する。

 

 切符を手にし、少し安心したので駅の周囲を見て周るが、「トイレがない」のである。駅のホームで仲良くなった学生たちと話してみると、なんと「ミャンマー鉄道には、ヤンゴン駅とマンダレー駅にしかトイレはないよ」とのことであった。

 

 では、ヤンゴン駅とマンダレー駅でない、「その他の駅」ではどうしているのか。「近所の店や民家のトイレを(有料で)借りて済ます」のである。

 

 話をした学生のうちの数人が、自分がトイレに行きたいと言うと、「じゃあ一緒に行こう」ということになり、駅の北側の民家のエリアに連れて行ってくれた。そして、おもむろに住人に「トイレを使わせてほしい」と交渉し、慣れた住人は「家の奥ね」といった感じで見ず知らずの人々を家に上げ、トイレを使わせてくれたのである。

 

 靴を脱ぎ、勝手口から夕食の準備をしているキッチンを通り、家族の写真などがたくさんかけてある居間で寛ぐ娘さんたちに会釈をし、彼女たちの家のトイレを使う。帰りはその逆だ。これはこれで、なかなかに面白い経験であると感じたのであるが、ミャンマー鉄道は無駄に広い駅舎を作るよりも、「トイレを設置する」ということの優先順位をもう少し上げた方が良い気がする。

 

 

 

駅員はトイレどうしているのだろう。毎回、民家?