ロバート・ルドゥラム原作の映画化、マット・デイモン(Matt Damon)主演のThe Bourne Identity (2002)、The Bourne Supremacy (2004)、The Bourne Ultimatum (2007)の三部作に続くJason Bourneシリーズの最新作。
前作『The Bourne Ultimatum』から9年経っての映画なだけに、前作までを観てきた観客は、やや熱が冷めた感じで本作を眼にすることになった。おそらく、本来は撮る予定がなかったが、「儲かるから」という理由で掘り起こした企画なのだろう。
歳を感じさせないマット・デイモンの肉体美には賞賛を送るが、この映画のどうしようもなく「辻褄合わせ的なストーリー展開」には閉口するしかない。前作までのストーリーにもずっと関わっていた筈だが、本作で初めて出てくるAssetという傍若無人な殺し屋に過ぎないCIAの凄腕諜報員など、人物造形もなにもあったものではない。

近年のマット・デイモンの出演作には、疑問符がつくものが多い。中国大陸の「やれやれ系映画」にも出演し、これから公開となる。
若い頃に撮っていた名作群とは裏腹に、映画に大きな予算がかけられるようになってから駄作を連発し、晩節を汚し続けているジャン・イーモウ(張芸謀)監督の2016年公開予定の巨編『長城(The Great Wall)』にもマット・デイモンは出演している。
この『長城』は、すでに公開されている予告編を観るだけで、「マット・デイモン、いまさら中国大陸のファンタジー映画に出演か」と驚かされる。「万里の長城」はモンゴルからの襲来に備えて造られたものであることは誰もが知る所だが、この映画では戦う相手はどうやらより劇的で、しまいには竜まで出てくるようだ。映画を観る眼のない大陸人は喜ぶだろうが、その他の世界では、「マット・デイモン、何をやっているのだろう」と首を傾げられるはずだ。
マイナスの面を上げていくとキリが無いので、プラスの面に眼を向けてみる。それでもマイナスの面が眼につくが。
効果音は予算のある映画なので良い。音楽はすぐに忘れてしまうが。ハイテクを駆使した情報戦に絡む映画のはずなのだが、なぜか情報技術的なところはかなり曖昧。それでもお金をかけて作った映像なので、迫力はある。

ギリシャで暴動が起きているシーンなどは、緊迫感がある。しかし、ギリシャよりもトルコの方がより現実味があるのではないかと思える。このシリーズでは毎度のようにJason Bourneがその辺にあるバイクを盗んで街を駆け抜けるのだが、本作でもそれは同じ。前作ではDucatiのディアベル系の格好良いバイクだった気がするが、今回はギリシャ警察の白バイ。
それでは、慣例の25点満点の映画評をしておこう。
『Jason Bourne』(2016)
Visual: 5
Performance: 4
Screenplay: 3
Sound & Music: 3
Originality: 3

合計25点満点で18点!
映画のチケットの高い日本では、劇場で観るのはお勧めしない。クアラルンプールの新都心へと変わりつつあるKL SentralにあるNU Sentral五階の映画館にて、MR14(約350円)で観た。金銭的ダメージは少なかったが、時間は同じように投下した。
<総評>
前作でこのシリーズはやめておけば良かったのに 。
正直、残念。