中途半端なミュージカル映画で感動することは難しい。しかし、昨年末にベトナムにて事前情報を持たず、時間調整のために期待せずに観た『LA LA LAND』が快心の作であった。まず、オープニングの渋滞シーンから幻想的なシーンへと移行するビジュアルに、観客は釘付けになるだろう。
つい先日には、ゴールデン・グローブ賞を7部門獲得したとニュースになっていたのも記憶に新しい。日本では「ゴールデン・グローブ賞7部門獲得作品!」と喧伝されるであろうことは容易に想像がつくが、そもそも賞争いというのは、その年の他の映画が豊作であったかどうかにも関わってくるであろうし、ビジネス的な配慮が働くこともある。特に日本の賞はそうした傾向が強い。
渋滞のイライラとした雰囲気から、場面は幻想的なミュージカルへと移行する。現実と空想とを見事にミュージアルで紡いでいき、最後まで息が切れないところはさすがである。128分という長丁場を感じさせないだけの波がずっと続く。
監督・脚本は音楽が主題となっている傑作『ウィップラッシュ』(邦題はなぜか『セッション』)のダミアン・チャゼル。主演にエマ・ストーンとライアン・ゴスリングの二人。主演の二人はミュージカル畑の出身ではないはずだが、それぞれ相当に訓練したであろうことが垣間見られる。

『メリー・ポピンズ』や『雨に唄えば』、『サウンド・オブ・ミュージック』などの往年のハリウッドの傑作ミュージカルと比べると、本作は各要素で非常に巧みな映画ではあるものの、「飛び抜けて記憶に残る歌」がなかったことが、ミュージカル映画の歴史に留まることの難しさを物語っていると感じた。それでも、音楽や映像は格段に美しい。


それでは、慣例の25点満点の数値評価をしておこう。
Visual: 5
Performance: 5
Screenplay: 5
Sound & Music: 5
Originality: 5

なんと、満点!
大きな欠点を探すのが本当に難しい作品。劇場で観るに足る美しい映像と音楽。これはぜひとも大きなスクリーンで観て欲しい映画である。日本での公開は2017年2月からの予定とのこと。
終わり方も実に切なくて良い。ただのシンプルなハッピー・エンドよりも、この終焉の方がずっと深みが増す、というラスト。
La La Land スタンダード・エディション Blue Ray
良い映画を観た後は、小躍りしたくなる。
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