名作だが、観る人を選ぶ『ムーンライト』

 

 先日のアカデミー賞の作品賞を受賞した『ムーンライト』。

 

 アカデミー作品賞の発表の際に、『ラ・ラ・ランド』と間違えて発表されてしまい、『ラ・ラ・ランド』陣を歓喜させた後に、「すみません、実は『ムーンライト』でした」、という悲喜こもごものオチをつけることになったアカデミー賞の授賞式は、今後も語り継がれることであろう。

 

 この『ムーンライト』を韓国はソウルのロッテ・ワールドにて観てきた。

 

 蛇足であるが、ソウルのロッテ・ワールドのシネマには、ギネス・ブックに登録されているという「世界最大のスクリーン」があるらしい。『ムーンライト』の公開は、普通の「そこそこ大きなスクリーン」であったので、この「世界最大のスクリーン」を堪能することはできなかった。といっても、巨大なアイマックスのスクリーンで観るような内容の作品でもないが。

MOONLIGHT

 

R | 1h 51min | Drama| 18 November 2016 (USA)

 

 

 

 

 物語はアフリカン・アメリカンの主人公(シャロン)の「少年期」(小学校時代)、「十代」(高校時代)、そして「青年期」の三つの時間軸で流れる。劇中で主要人物となっているのは、ほとんどがアフリカン・アメリカン(いわゆる黒人)である。このある人物の三つの時代を描くというスクリプトは、台湾の映画監督ホウ・シャオシェンがかつてやっていたものを想起させる。

 

 この映画はその内容(貧困層のアフリカン・アメリカンのゲイの目覚めと彼の人生の幾ばくかの幸せな時)から、「観客を選ぶ映画」である。男女のカップルや夫婦で観に行っても、その後の盛り上がりには欠けるだろう。同性のカップルだと、逆に「良い物語を観た」という感慨にふけることができるかもしれない。

 

 

 本作『ムーンライト』では、推定の映画制作予算が150万ドル(約1億7000万円)しかかかっていないが、20倍もの予算(3000万ドル(約34億円)の制作費)をかけて撮られた『ラ・ラ・ランド』を差し置いて、アカデミー賞の作品賞を受賞した。これは、随分と商業的に見えるアカデミー賞にも、「商業的なだけではなく、映画そのものの価値」を認める仕組みがまだ働いている証左でもある。

 

 エグゼクティブ・プロデューサーのブラッド・ピットは劇中のどこにも出てこないが、彼が関わる映画は、こうした「オリジナリティにおいて映画史にピリッと光る」名作であるように思える。私生活では色々とあるようであるが、映画人としてはやはり優れた人なのだろうと思わされる。

 自分は『ムーンライト』を観に行く前に、「アフリカン・アメリカンのゲイの目覚めに関する映画」であることを知らなかったので、観終わった後にやや困惑した。エンディングも「この後どうなったのだろう」と気になる終幕である。

 

 

 最後に慣例の25点評価をしておこう。

 

 

 

Moonlight』(2016

 

Visual: 4

Performance: 5

Screenplay: 5

Sound & Music: 3

Originality: 5

合計25点満点で22点!

 

 観終わって一ヶ月ほど経つが、すでに音楽はほとんど思い出せない。ビジュアルはそつなく美しいものの、生活感があるものをかなり削ぎ落として「世界観を作った」感じがあったので4点とした。

 

 オリジナリティは5点満点。本当は67点でも良い気がするが、5点満点の評価軸としているので。

 

 劇場に観に行かなくとも、DVDやブルー・レイで観てみると良いかもしれない。日本では3月末から公開中のようではあるけれど、夏か秋にはパッケージもでるでしょう。

 

 最後に、ポスターの画像の三つの時代のシャロンの顔を貼っておこう。これらがコラージュされているのですね。

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観る人を選ぶ映画は、良い映画と言えるかもしれない。