以前、買い込んだDVDの中から古い邦画を観た。小津安二郎監督の『お早よう』である。1959年公開の作品であるから、57年前の映画になる。自分がまだ生まれる前の映画であるばかりか、この映画をリアル・タイムに劇場で観ていた世代は、そろそろ他界している人の方が多いのではないだろうか。小津監督をはじめ、ほとんどの俳優・スタッフは他界しているだろう。

『お早よう』
製作=松竹(大船撮影所)
1959年 94分
製作 |
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山内静夫 |
監督 |
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小津安二郎 |
脚本 |
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野田高梧 小津安二郎 |
小津監督の『東京物語』はつとに有名であるが、監督の名前を知っていても、しっかりとその作品を全て観ているという若い人は少ないだろう。かく言う自分も観ていない作品の方が多い。

小津安二郎が日本映画界・世界の映画界に与えた影響は多大で、その絵作りの細部にまで至るこだわりはつとに有名だ。役者にも自分の思い描いた通りの演技をさせたらしく、NGを80回以上出すこともあったという。役者がカメラを見据えて話す手法や、ロー・アングルの安定感など、彼が生み出した手法の幾つかは、今日のカット数が多く、動きの速い映画では観られなくなりつつある。

本作は、長屋のような場所で近所付き合いをせざるを得ない人々の、なんでもない日常生活の中で、他愛もない会話を用いながら、人生の憂い、人々の優しさや滑稽さや卑屈さ、繰り返し同じ題材による笑いの要素、時折ファンタジーの要素を混ぜながら、人間の心の明暗を描く手腕などは、さすが小津安二郎である。

本当に、一つ一つのシーンは「どうでもよい内容の普通の会話」で成り立っているので、ひょっとすると動きの速い映画になれた世代には、観終わることが困難かもしれない。

<『お早よう』>
Performance: 5
Visual: 5
Story: 5
Sound & Music: 3
Originality: 5
合計:25点満点で23点!
DVDよりもブルーレイだと、よりオリジナルの映像に近い美しさが味わえるらしいので、いつかブルーレイでも観直してみたい。
あいらぶゆー
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