2016年の邦画は、話題作が多い。『シンゴジラ』のヒットの後、新海誠監督の『君の名は。』が公開され、大当たり。日本国内だけで興行収入200億円も視野に入ってきているという。
10月末、ハロウィン前日に台北101の近くで、『君の名は。』を観た。320台湾ドル、約1000円にて。
関係ないが、この日はやけにゲイの人々が多く台北の街でコスプレをしているな、と感じていたが、同日に「ゲイの結婚を認めるよう行政に訴える」数千人規模のゲイ・パレードがあったようだ。
もし台湾でゲイの結婚が認められるようになると、アジアのゲイ市場の中で最も先進的な国となる。タイ王国にはやたらとゲイやレズビアンが多いが、結婚は認められていない。
さて、台湾でも『君の名は。』はしっかりと客を集めている。スタジオ・ジブリの作品に慣れ親しんだ台湾の人々。世界で最も親日な台湾という市場は、日本企業や日本製品が「アジアで通じるかどうか」の試金石として使われることが多い。ジブリ作品によってしっかり耕されていた台湾市場の豊かな畑に、良質の『君の名は。』という種がまかれたようなカタチだ。
新海誠監督作品の中でも、「分かりやすさ」と「ハッピー・エンド感」で『君の名は。』はメジャー作品となったと言われている。新海誠作品の中で、私が個人的に最も好きなのは、『秒速5センチメートル』である。新海誠監督が一人で作り上げたというデビュー作の『星の声』や『秒速〜』では、思い焦がれる恋人たちが離れ離れになるという、なんとも切ない気持ちが描かれているのだが、『君の名は。』では「切なさ」だけで終わらない。
秒速5センチメートル、Blu-ray版
企画・プロデユースで映画の冒頭からも大きくクレジットされている、東宝の川村元気プロデューサーは、今日の邦画界においては、すでにスタジオ・ジブリの鈴木敏夫プロデューサーよりも存在感を増している感がある。本作の脚本にも新海誠監督とディスカッションを重ね、多分に影響を与えているという。川村元気プロデューサーは79年生まれというから、まだまだ若手だ。末恐ろしい。
川村プロデューサーのこれまでのプロデユース映画には、『電車男』『悪人』『告白』『モテキ』など、数十億円クラスの興業成績を叩きだしているヒット作が幾つもあり、自身の小説『世界から猫が消えたなら』はミリオンセラーにもなっている。
日本を代表するクリエイターやプロデューサーに「30代にどんなことをしていましたか?」という問いにより、それぞれのブレイクスルーまでの仕事の変遷を聞いた『仕事。』では、宮崎駿、鈴木敏夫、坂本龍一、横尾忠則、秋元康、糸井重里、篠山紀信、沢木耕太郎、山田洋次、倉本聰、谷川俊太郎、杉本博司といった錚々たるメンバーに話を聞いている。
それでは、慣例の25点満点の数値評価をしておこう。
Visual: 4
Performance: 4
Screenplay: 4
Sound & Music: 4
Originality: 4

合計25点満点で20点!
冒頭の映像は、「あれ?」というクオリティであったのだが、終盤に向けて次第にクオリティが上がっていくと感じたのは気のせいだろうか。
音楽は主題歌を担当するRADWIMPSとの共作が話題となっているが、楽曲自体のクオリティでは『秒速5センチメートル』の主題歌である山崎まさよしの『one more time, one more chance』を超えてはいない。(と私は感じる)
オリジナリティという意味では、監督も認めるように「入れ替わり」や「時間のねじれ」という仕掛けは、既に他の作品にも見られるものなので、一点減点した。
素直に楽しめた
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