「世界最深のメトロ駅」がウクライナの首都キエフにあることを以前紹介した。
そして、世界で2番目に深いメトロのある街は、ロシア第二の経済都市サンクトペテルブルクである。
サンクトペテルブルクのメトロは、ウクライナが旧ロシア連邦から独立する前は、旧ロシアで2番目に深いメトロであったが、最も深いメトロを有する地域が独立したために、ロシアで最深(世界で二番目)に棚上げされたという経緯がある。旧ロシア連邦は、こうしたやたらと深いメトロを掘ることが得意だったのだ。

今日、ウクライナはロシアとの距離を取りたがっているが、ウクライナがかつて旧ロシア連邦の一角を占めていなければ、首都キエフに(ある意味で)「立派なメトロ」は出来上がっていなかっただろう。

文化と経済の発展したサンクトペテルブルクの地下鉄ホームには、ホームと線路との間に、乗客を守る目的であろう「安全扉」が設置されている駅がいくつかある。しかし、その「安全扉」が首を切り落とす「ギロチン」を想起させるところが、なんとも帝政ロシア的である。

鋼鉄製のような、中に国家機密でも隠していそうなタフな外見の重そうな扉だが、列車が到着するとかなりの勢いで開き、列車の扉が閉まるのとほぼ同時に、それは「物凄い勢い」で閉まるのである。まるでギロチンの大きな刃が罪人の首に落とされるかのように。

その扉の閉まり方たるや、乗り遅れて挟まれでもしたら、骨折しそうなほどに豪快な勢いなのだ。ネズミ捕りのケージなどには、捕まえるだけでなく、いきなりネズミの首を刎ねる仕掛けの付いているものがあるが、首の細い嬰児などだったら、このメトロの安全扉は首を刎ねてしまうのではないかと心配になるほどだ。

とはいえ、これは「(おそらく)乗客の命を守るための安全扉」なのである。まさか「駆け込み乗車をしようとする乗客」の首を刎ねるのが目的ではないだろう。 「線路への飛び込みをしようとする悩める者たち」 を現実世界につなぎとめる、最後の砦の扉にも思える。

今日もロシアで一番深いサンクトペテルブルクのメトロ網では、ギロチンのような轟音を立てて開閉する「安全扉」が、乗客の安全を無骨に守っていることだろう。屈強なロシアの兵士のように。

首を落とされないように気をつけよう。
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