シベリア鉄道の旅:ロシア人美少女とのお別れ

 

 「モンゴルのウランバートルから、ロシアのモスクワへの鉄道の旅」について書いている。

 

 

  ロシア人の美少女、クシャーシャと彼女のお婆さん、そして寡黙で優しい目をした年配男性の目的地は、ウランバートルからモスクワへと向かう道程のおよそ半分の場所、オムスク(Omsk)であった。

 

 相部屋の3が下車してしまうと、その後、途中駅でも列車は新たな乗客を乗せることなく、オムスクからモスクワまでの23の間、4部屋のコンパートメントは自分一人の貸切となった。

 

 ウランバートルからモスクワまで45日の旅(停車駅の時間を除くと、時速は約70キロ平均)で、最後の23はコンパートメントを独占でき、価格が1万円代半ばというのは、非常にコスト・パフォーマンスが高い列車の旅だと言えるだろう。「列車の旅情」が好きな人であれば。

 他のコンパートメントも同様で、途中下車して乗客はどんどん減っていくが、ロシア領土に入ってからというもの、このモンゴル鉄道に所属するこの列車には、新たな乗客が乗り込んでくる気配がなかった。ひょっとすると、モンゴル内では乗降があるが、ロシアに入るとモンゴル鉄道のチケットの売買が運行システムの都合上、新たな乗客の受け入れができなくなっていたのかもしれない。

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 目的地であるモスクワへの残る23日の道中、一人で4人部屋のコンパートメントを独占することができた。同一車輌の他のコンパートメントも似たような状況であり、二つ離れた部屋に3人だけモンゴル人の年配の旅行者がいたが、他にはモンゴル人の温かい対応をしてくれる女性車掌と、時折やってくるロシア人の若い男性車掌のみが同一車輌内で顔を合わせる仲間となった。

 通常であれば、4人部屋のコンパートメントが一人で使えるのであるから、得をした気分になるのであろうが、この時ばかりはやや寂しい気がした。というのも、あのクシャーシャがいなくなってしまったのだ。

 

 彼女は「面白い遊び相手が見つかった」とばかりに、日中はずっと自分に話しかけて来た。自分がロシア語をほとんど理解していないことなどお構いなしに、ずっと話し続けるのだ。

 

 日中、自分が昼寝をしていても、クシャーシャは飼い猫と遊ぶがごとく、寝ている自分の肩を小さな指で「とんとん」と叩き、自分が眼を開けるやいなや、「スマトリー!スマトリー!(見て!見て!)」と、彼女の宝物であろうお気に入りの人形やユニコーンなどを紹介してくれるのであった。何度も同じものを。

 

 また、スマート・フォンにインストールしてあるゲームを自分に見せてくれることもあった。自分も知っている「サブウェイ・サーファーズ(Subway Surfers)」というゲームがそこにはあった。クシャーシャは実際にプレイして見せてくれるのだが、どうしようもなく下手くそであった。