変わりゆくカオサン通りと、変わらないもの

 

 東南アジア諸国の物価の上昇は凄まじい。

 タイ王国はバンコクにあり、世界中からのバックパッカーたちを集めてきたかつての安宿街カオサン通りでも、安宿が次第に減りつつある。

 

 一昔前、数十バーツでドミトリーの部屋に泊まることができたカオサン通りであるが、今日ではドミトリーでも200バーツ前後はみておかないとならない。

 

 また、ここ10年ほどでカオサンとは思えない宿泊料のホテルも増え、一泊2000バーツも下らないホテルがあるなど、かつてのカオサンを知る旅人からは、その変わりように溜息が漏れることだろう。

 しかし、カオサンの持つ「若者たちを集める吸引力」はいまだに健在であり、カオサンが最も華やぐ週末の21時過ぎから明け方の2時にかけて、カオサン通りとお隣のランブトリ通りは、多くの旅行者や地元の若者たちでごった返し、日付が変わる頃から地べたで泥酔する若者たちがこの通りに彩りを添える。それが彩りと呼べるものなのかは分からないが、物価の安い頃から今に至るまで、泥酔した若者の無鉄砲さは変わらないようだ。

 

 カオサン通りでは、夕闇の迫る頃から、フルーツ屋台、安くそこそこデザインの良いTシャツの露店、いつ揚げたのか分からない怪しい昆虫などを売るゲテモノ屋台、安く腹にたまるタイ料理を食べさせる露店などが、通り沿いのバーやクラブに負けじと、逞しく商売を始める。

 多くのアジア人はただ見ているだけで通り過ぎるゲテモノ系の屋台では、欧米人が果敢にサソリや昆虫のフライをセルフィー目的で口にしている光景は定番になりつつある。毎日フライするわけでもなく、また飛ぶように売れているというわけでもないゲテモノ&昆虫系の屋台の食品。腹を壊さないか心配だ。

 

 

 さて、このカオサン近辺は、さすがにバンコクらしく、多くのゲイやおカマがナンパやナンパ待ち、逆ナン(?)を繰り広げてもいる。それを商売にしているレディー・ボーイの娼婦(男娼)が虎視眈々と酔った旅人を狙い立つ様は、さながら妖艶な舞台に怪しさを添える端役の役者たちのようだ。

 

 一通りカオサンを楽しんだあと、酔い潰れ泥酔している無防備な旅行者の若者を見るにつけ、「貴重品はちゃんと管理しておきなよ」、「屈強なおカマにお持ち帰りされないように気をつけな」と心の中で呟く自分は、在りし日のカオサンに郷愁を抱きつつ、若い友人たちとの談笑に寂寥をごまかす、中年の異邦人となっているのであった。

 

カオサン近隣のリノベーションは進む

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