タイ王国: 2バーツ硬貨に描かれた寺院

 

タイ王国には、いくつかの種類の硬貨がある。

 

メジャーな硬貨には、1バーツ、2バーツ、5バーツ、そして10バーツがある。

さらに、バーツよりも単位の低い硬貨として、サタンがある。25銭刻みで25サタン、50サタンの二種類の銅貨があるが、なかなか利用する機会がないので、財布の中に残存してしまう可能性が高く、厄介な存在である。

 

この中で、割とよく使われる2バーツ硬貨は、金色の硬貨であるが、銀色の硬貨も混じっているので、小ぶりな1バーツと見分けが付きづらいこともある。かつては2バーツといえば、「金色のコイン」とすぐに目視できたのであるが、近年になって銀色のにバーツもかなり増えているようで、紛らわしいことこの上ない。

 

もともと金色であった2バーツのメッキが剥げたのか、あるいは最初から「銀色の2バーツ」を鋳造するようになったのかは定かでないが、小銭入れの中で1バーツと見分けのつきづらいサイズ感の2バーツが増えるのは、「小さいけれど確実に厄介な存在(小確厄)」だ。

 

この銀色だったり金色だったりする「小確厄2バーツ硬貨」に描かれているのが、平地ばかりのバンコクにしては珍しい丘流に建つ「ワット・サケット(サケット寺)」である。正確には、「ワット・サケット(サケット寺)」は2バーツ硬貨に描かれた人工の丘に建てられた寺と、その周囲の(割と広い)寺院コンプレックス全体を指す。丘の寺の部分を英語名では「ゴールデン・マウント」という。

ワット・サケットは、ぱっと見は新しそうな寺院であるのだが、実はバンコクに遷都する前のアユタヤ王朝時代からある、タイ王国にしては比較的古い寺院であるという。

 

寺院最上階までの高さはおよそ80メートル、その上にある鐘状の仏塔も合わせると100メートルほどの高さがある。344段の階段を上り、80メートルの高台から眺めるバンコクの街は、なかなかに風情がある。西側には王宮やワット・ポーなどの歴史地区が遠目に広がり、南側にはチャイナタ・タウン、西側には背の高い新市街が広がる。

 

かつては無料で参拝できたワット・サケットであるが、タイ仏教の商業化の流れはここでも健在であり、外国人は20バーツの入場料を支払わなくならないといけなくなった。外見がタイ人に見える人は、黙っていればそのまま入れてしまう緩さはあるが、ここでも「外国人からは尻の毛までむしり取ろう」というタイ人の精神性が垣間見られるのは、なかなかに気分の悪いものである。

 

せめて入場料がワット・サケットの描かれた「2バーツ」であるのなら、「憎いことするね」と思えるのだが、「20バーツ」では当該寺院が描かれた「2バーツ」硬貨と全く関係がない。

 

さて、チャオプラヤー川の支流には何本もの(控えめに言っても)薄汚い小川がある。その小川の一本に、バンコク市内を西へ東へと庶民の足として走る河川ボートがある。そして、このボートの最も西側の船着場から歩いてすぐの場所に、ワット・アルンはある。

 

中国の蘇州同様に、バンコクも「アジアのベネチア」という異称を持つというが、残念ながらバンコクにはベネチアのような趣はない。それでも、渋滞を避ける庶民の足として、薄汚い小川をバンコク中心部を東西に抜ける船でワット・アルンの麓そばに乗り付けるのは、なかなか趣のあるものである。

 

次回「歴史ある寺院にも商業化の波」に続きます。

バンコクではほぼ唯一の丘

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