大型ショッピング・モール先進国のタイ王国には、日本でもお目にかかれないような豪華絢爛なショッピング・モールであるアイコンサイアムのような空間から、昔ながらのローカル市場まで、さまざまなタイプのマーケット・市場がある。
こと生活必需品である食品などを求める場合、多くの場合、真新しいスーパーに足を運ぶことになる。各地に支店を持つセントラルに入るやや高級路線のTOPSマーケット、元々はイギリス系スーパーのテスコ・ロータス、大きいのから小さい店舗まで様々なバリエーションのあるBig C、倉庫型の量販店のマクロなど、CPグループやセントラルが手がける、タイ王国の各地にネットワークを張り巡らせたチェーン店がある一方で、昔ながらの味のある市場も捨てがたい。
王宮から南へ少し、昔日のバンコク中心部にあり、花市場として名を馳せる1961年から続く「ヨドピマン花市場」は、煌びやかなチェーン系のスーパーが林立するバンコクにおいても、いまだ特異な存在感を放つ場所である。
ヨドピマン花市場は、海運や河川輸送がこの地の物流動線の主流であった頃の名残を残す、チャオプラヤー川に面した場所にある。今日ではトラックなどの陸上輸送の方がはるかに多くなったタイ王国。お世辞や冗談かもしれないが、かつては「東洋のベニス」と呼ばれたこともあったという。その「水上交通・輸送の都」であったバンコクの時代から、60年ほど続く市場だ。
この市場のすごいところは、その歴史だけでなく、何と24時間営業であるというところである。といっても、全ての店舗が24時間営業というわけではなく、一部の店舗がということではあるが、それでもかつての「バンコクの花・野菜の中央市場」としての貫禄を見せつけてくれる。
いくつもある出入り口から、ふらふらと市場の中に入ると、そこには無数の小規模店舗が所狭しと肩を寄せ合い営業している。かつての築地の魚市場を、ずっと混沌とさせ、通路を狭くし、照明を暗くし、さらに掃除が行き届いていないようにした感じである。
二階へと続く階段を登ってみると、かつては賑わっていたのであろうが、すでに営業していないひっそりと静まりかえった店舗群があるのも、時代の移り変わりを感じさせてくれる。
今日でもヨドピマン花市場が失われずに存在感を放つのは、やはりここで売られている花や野菜の鮮度、そして価格の安さにあるだろう。同じ花や野菜が、他の真新しいショッピング・モールやスーパーなどでは、数倍もの値札をつけて売られているのである。
ここを訪れると、自分は決まって日持ちがして場所を取らないライムをいくつか買い求める。一つ3バーツ、10円ほどから売られており、大ぶりのものでも5バーツほどである。これがTOPSなどの真新しいスーパーとなると、一10バーツ以上となるのである。
次のブログに続けます。
ありし日のバンコクへ。
次の記事へ:「猫のたくさんいる花市場:ヨドピマン」
一つ前の記事へ:「人気の少ない鉄道市場に想う」
そのほかの「タイ王国の記事」へ
そのほかの「ASEANの記事」へ