泰緬国境沿いのシンコン国境市場を歩く

 

 前回のブログ「泰緬国境のシンコン国境市場に想う」からの続きです。

 

 

プラチュアップ・キーリー・カーン県とミャンマーを結ぶ国境ゲートであるシンコン・ボーダーのすぐ南側に、小振りながらもミャンマー情緒の感じられる市場がある。国境近辺を行き交う車のナンバーを見ていると、タイのナンバーに混ざって、ミャンマー・ナンバーの随分とくたびれた車もある。

 

グーグル・マップを見ると、「ショッピング・モール」であったり、「土産物屋」であったり、はたまた「骨董屋」のような表記があるが、どれも小さな商店のような佇まいであり、かつ密集しているので、これらをひっくるめて「シンコン国境市場」と呼んでおこう。文字変換すると「新婚国境市場」とまず出るが、新婚の雰囲気は全然ない。至って普通の、「ミャンマー人の、ミャンマー人による、ミャンマー人と時々外国人のための市場」だ。

 

売られているものは、ミャンマー現地で目にする食品と日常用品が主流である。市場の端の方にミャンマーだかタイだかが混ざったような年季の入ったものを売る骨董屋があるが、店の雰囲気は悪くないものの、客足の方はいまひとつといった感じであった。

 

本来、シンコン国境市場の中央は駐車場なのであるが、そこにいくつも果物や食品の屋台が出ている。いや、正確にいうと屋台というよりも、日傘はあるもののテーブルや椅子は少ない。地べたにただゴザを敷いてその上で物を売っているという「ミャンマーらしい」露天行商の女性が多い。東南アジアでは働き者の女性、ぐうたらな男性という図式が経済的に遅れている国に行くほど顕著であるが、ミャンマーでは本当に女性がよく働き、男性はどこかで日中の野良犬のように寝ているかのようだ。

 

売られているものを見て周る。野菜、果物、なんだかわからない食材、ミャンマー茶、ミャンマー珈琲、巻きタバコ、植物、男女問わずミャンマーの人々の日常服であるロンジー(丈の長い巻きスカート)の仕立て屋、無駄に巨大なパッケージの飴、カフェ食堂兼住居、ぱっと見では何屋だか分からないがしばらく見ていると薬を売っているとわかる薬局、実にミャンマーらしい商いが揃っている。

 

残念ながら、市場で売られているものに欲しくなるモノはほとんど見当たらないのだが、このシンコン国境市場の最大の売りは、やはり「そこではたらくミャンマーの人々の立居振る舞い、ミャンマー情緒」だろう。

 

日焼け止め兼お化粧である「タナカ」を顔に塗ったミャンマー女性たち、はにかみながらもキラキラした笑顔で写真に収まってくれるミャンマーの人々、無邪気なミャンマー人の子供たち、ミャンマーの空気がここにはある。

 

巻きタバコを求める時に、一日で最も真剣な表情をするのではないかというようなミャンマー人男性、日中なのにやたらと薄暗いトタン屋根の商店街、懐かしいミャンマーがここにある。

 

 

巻きタバコ屋といえば、一昔前にはアジアのどこの国にもあったのかもしれないが、今ではミャンマーと台湾ぐらいでしかお目にかかれない。台湾では「檳榔」という文字が踊る店が街道沿いに今でもあるが、夜になると無駄に煌びやかなネオンで飾られているのが面白い。夜光虫のごとく男性客を集客する効果があるのであろうか。

 

かつて、台湾の檳榔屋では、なぜか無駄にセクシーな格好をしたお姉さんが檳榔を売っているお店が多く、「これはひょっとすると、いかがわしいサービスがあるのではないか」と無駄に男性の興味をそそる檳榔屋もあった。しかし、今では割とそうしたお店は鳴りを潜めているようである。

 

ミャンマーの巻きタバコ屋は至って真面目・素朴で、そうした不埒な感じは微塵もない。逆に、不埒なことをさせたら右に出るものはいないタイ王国において、「不埒な巻きタバコ屋」や「不埒な檳榔屋」が全く存在しないのは興味深い。巻きタバコを喰む人がいないので、需要がないのだろう。

 

 

「シンコン国境市場」、2020年のコロナ禍で国境を行き来する人が激減し、202121日のクーデターからの今日まで続く動乱により、人気が全くなくなっているかもしれない。

 

ミャンマーの人々の顔に、またかつてのようなキラキラとした笑顔が早く戻ることを願ってやまない。

傍観しているだけではいけない

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