タイ王国:海に突き出した洋上レストラン

 

前回から、Bang Pu Recreation Center(以下バンプー)」について書いています。今回はその続きです。

 

 

 

渡鳥であるカモメが多くやってくることで有名な、バンプーには、家族連れやカップルなど、さまざまなタイプの人々が訪れる。

 

数百羽もの群れをなして洋上に揺蕩うカモメたちの大群は圧巻であるが、また少し怖くもある。ヒッチコックの映画『バード』のように、狂った鳥たちが襲い掛かってきたらと想像すると、ここを訪れる人間の頭数よりも遥かに多いカモメたちの数、それなりのカモメの体躯の大きさに阿鼻叫喚の舞台となるであろう。

 

しかし、そんな夢想はよそに、カモメたちは人間の手から餌を貰うことになんの抵抗もないようで、当の人間の方もにやけた顔をしながらカモメたちに餌をやり、それと同じぐらいか、より大きな熱量で自撮りに勤しんでいる。

 

バンプーのメインのアトラクションは、渡鳥であるカモメたちのいる景観を眺め、人によっては餌付けをすることであるが、「野生動物に餌付けをしないように」「生態系を破壊することになる」というような、ごく真っ当な意見はここでは少数派のようである。施設としても餌付けの餌を販売でき、多くの人が訪れ、このレクリエーション・センター内部の売店やレストランでさらに金を落としてくれれば、願ったり叶ったりといったところなのであろう。

 

 

桟橋の先端、海に突き出た場所にある施設内には、レストランやイベント・ホールがあり、ここを訪れた人の多くがこの洋上の施設で食事を楽しんで帰ることになる。

 

「値段」の方は、バンコクよりは安いが、他の海沿いの町のレストランと比べると高く、また特筆すべき質やサービスがあるわけでもない、なんともゆるいポジショニングのレストランである。

 

ここで給仕として働く者の多くが、高校帰りの制服の上から賄い着を着た田舎の女子高生たちであり、プロのレストランの接客は望むべくもない。まぁ、客の方も半袖に短パン、つっかけのサンダルやスニーカーを履いたのが主流であるので、釣り合っていると言えなくもない。

 

また、料理の方も写真から類推して貰えるであろうが、「美味いものを出すことにプライドがあるシェフ」のいるレストランではなく、「とりあえずオーダーが来たからそれを出そう」という間にあわせのようなレベルの食事である。料理の盛られた器も、「粗野な客が落としたり、女子高生の給仕が手荒く扱っても問題ない」プラスチック製の皿が中心である。

 

 

それでも、多くのカモメの飛来するタイ王国の乾季の時期(11月から3月ごろ)には、いつもそれなりに客足があり、逆に6月から9月ごろまで、雨季のど真ん中のカモメのいない時期には、「カモメの代わりに閑古鳥が鳴いている」というのが通例のようである。

 

ここを訪れる際には、ぜひカモメのいるシーズンに訪れたし。カモメが全然いない時期に訪れても、特に美しい海が見られるわけでもなく、綺麗な砂浜のあるビーチがあるでもなく、訪問者が閑古鳥のように泣く羽目になりかねない、タイ王国らしい緩い場所なのである。

 

 

畢竟、そう張り切って行くような場所でもないが、バンコクの喧騒を抜け出し、タイ王国らしい緩い時間を持ちたいという人には、一度行ってみても良い場所かもしれない。

『かもめ食堂』を想い出した。名前だけね。

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