※本ブログの内容は、私が初めてウクライナを訪問した2014年当時の内容です。
ご存知のように、現在ウクライナはロシアによる侵略戦争を受け、大変な状況にあります。連日ニュースで伝わってくるのは、過酷な戦渦の内容が多いです。「比較的平時のウクライナの素顔」を伝える目的で、過去の旅の内容を綴っています。
リヴィウ駅を後にし、いよいよ事前に予約しておいた宿を目指して歩き出す。
初めて訪れる国や街では、駅前や空港に屯するタクシーなどでぼったくられるのを恐れ、ひとまず駅や空港から少し頑張れば歩いても行けそうな場所に宿を押さえておくことがある。
夜行列車の長旅で、少し小腹が空いていたので、まずは腹ごしらえをしようと歩きながら適当な店がないか、宿へと向かう道すがら食事が取れそうな店を覗きつつ歩みを進める。
旅人にとって、「Googleマップのある時代」とそれ以前では、旅のしやすさが格段に違っているだろう。今日の旅人は、携帯さえ持っていれば、中国などのようにGoogleのサービスを遮断している国を除いて、Googleマップを片手にほぼどこにでも辿り着くことができるのである。それは初めてウクライナを訪ねた2014年にもすでにそうなっていたし、目的地に向けたトラムなどの乗り換え案内もすでに表示されるようになっていた。
しかし、旅人は「Googleマップでどこにでも行ける」という利便性を手に入れた一方で、「紙のマップなどを準備し、苦労して目的地を見つける」というオールド・スクールな旅のスタイルは、もう永久に失われてしまったとも言える。
端正な外観のリヴィウ駅を後にし、垢抜けないローカル感が漂う駅前ロータリーを横断し、教会などを横目にリヴィウの街の中心地側へと石畳を歩く。街ゆく人々の雰囲気や、店先に出ている広告、掲げられたキリル文字表記の案内などに異国情緒を感じる。


駅から数分歩いた所に、暇そうだけれど、それなりに清潔感のあるお店を見つけた。店員の女の子たちは揃いのユニフォームを身につけ、胸には名札があり、テンガロン・ハットを被り、またなぜかアメリカの先住民男性のような像の近くで寛いでいた。

ウクライナとはまるで関係のないコンセプトのお店であったが、店員の女の子たちの感じは悪くなく、軽く何かを口にすることにした。店内を見回してみても、ウクライナ色はかなり薄い店であったが、かねてから試してみたいと思っていた「ウクライナ本場のボルシチ」をここで注文した。いよいよウェスタンとは全く関係のない料理である。

テーブルにサーブされたボルシチは、何の変哲もない、どちらかといえば無骨な感じの鮮やかな深紅の煮込みスープであった。

ウクライナの伝統的な料理はいくつもあるのだろうが、こうしてお店で一品だけボルシチを頼むというのは、日本で味噌汁だけ注文するようなものなのかどうか、その違いはよく分からない。日本の食堂に、いかにも旅人の風態の異国人がやってきて、「味噌汁」しか注文しなかったら、それはやや滑稽に映るだろう。せめてパンか何かを付ければそれなりに様になったのかもしれないが、そう思い至ったのはシンプルなボルシチと対面した後のことであった。
懐かしいボルシチ
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