ベトナム社会主義共和国の首都は、北部にあるハノイであり、ハノイは経済規模では国内二番手である。ベトナム経済で最大の街は、南部のホーチミン(サイゴン)であることは言うまでもない。では、ベトナム共和国で三番目の経済都市はどこか?
ベトナム事情を少しかじった人ならば即答できる問いであるが、それはベトナム中部にあるダナン(Da Nang)だ。
海に面したダナンの街は、ベトナムの北と南とを分ける山嶺の南側に位置する。山脈のこちらと側と向こう側では、気候が一変するのが面白い。ダナンの北の古都フエとの間の鉄道の車窓の景色は、ベトナム鉄道を好む人には特に有名な区間で、海を見ながら山脈をゆっくりと越えていくこの区間を「ベトナム随一の鉄道絶景」だとする人が多い。


ダナンの街は、ベトナム共和国の三番目に発展した街でありながら、人口約100万人とそう大きくなく、街の中心部に空港が位置し、空港から数キロ街の北側に鉄道駅が位置すると言った具合に、非常にアクセシビリティーの高い街である。約9600万人の人口を誇るベトナム社会主義共和国の第三の都市が、人口たったの約100万人というのは、とても小さい気がするが、それだけベトナムという国においては、人々がいろいろな地域に散らばって生活しているということを表しているのだろう。

首都ハノイや南の経済都市ホーチミンの空港は、他国の大きな都市同様、街中から数十キロ離れているのであるが、ダナンのそれは国際線の乗り入れもあるものの、街の中心部に位置しているのが面白い。
それはまるで、ベトナム共産党のいい加減な幹部が、「ダナンがこんなに大きくなるとは思っていなかった」という無計画さのままに、適当に空港の場所を決めてしまったかのようだ。

旅人を「空港から街中までの移動」だけでまた疲れさせてしまう街よりも、空港がすぐ街中にあるダナンは、観光やビジネスに訪れる人々にとって移動がしやすい街である。
少し頑張れば、空港や駅から海辺まで歩いていけないこともない。宿もベトナム人らしく、無計画にたくさん林立しており、多くの観光客を収容するだけのキャパシティは安宿から高級リゾートまで十二分にある。また新しい宿が次々にオープンし、部屋数が増え続けているので、観光客が増えても宿代が高騰しないのも、ダナンという街の魅力である。

ダナンには長い海岸線があり、突き出した半島部分には大きな女像や猿山があるなど、数日の観光には良い場所だ。さらに、ダナンの街を拠点に、南に30キロばかり行ったところにある世界遺産の町ホイ・アンに立ち寄ったり、ほぼ同距離にある山中の世界遺産ミー・ソン遺跡に行くこともできる。
交通量の比較的少ないダナンの街で、バイクをレンタルし、ベトナムのバイクの波に混ざってツーリングを楽しむのも一興だ。

ベトナム中部は、ダナンを起点に。
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