どこの国でも、ローカル市場を歩くのは楽しい。その国独自の文化や、土着の風土が垣間見られるからだろう。
中国大陸の20年遅れぐらいの位置にはあるが、ベトナムは急速に発展しつつある。かつての中国同様に、国内外の大型資本によるスーパー・マーケット、メガ・マートの類が続々とオープンしているが、そうしたスーパーやメガ・マートはどこの国に行っても、金太郎飴のように紋切り型で面白みにかける。
ベトナムの街歩きで面白いのは、何と言ってもまだベトナムらしさが残る「ローカル市場」ではないだろうか。個人商店だとあまりにも小さいのですぐに見終わってしまうが、幾つもの小さな商店の寄り集まった「ローカル市場」であると、品揃えも大型のスーパーに負けないぐらい豊富なこともある。経済の発展度合いからいうと、「ローカル市場」は「零細個人商店と大型スーパーの間ぐらい」の位置付けである。

ベトナム語で「チョー(またはジョー)」とは、「市場」のことを指す。ここではベトナム語の発音記号を載せると、環境によっては文字化けしそうなので割愛するが、Choのoの右側にヒゲと下に点がくっ付く。
語順は「チョー・アンクー(アンクー市場)」「チョー・ガ(駅前市場)」のように、先に「チョー」がつく。

上記の通り、20年前の中国大陸を想起させるベトナムは、急速に変わりゆく途上国の一つであるが、昔ながらのベトナムの匂いを感じるには、大きなスーパーなどに行くよりも、「チョー」に行くのが良い。大きな「チョー」では生活に必要な衣食住の「衣食」の部分はなんでも揃う。
「チョー」での主役は、「おばさん」だ。ベトナム男性がいい加減だからか、ベトナム女性はしっかりした人が多い。値段の交渉もしっかりしないとならず、また男性に負けず、相場をしらない人々からの「ぼったくり根性」もすわっている。



「チョー」は街(町)のサイズによらず、たいていどこにでもある。エアコンの効いた「チョー」にはなかなかお目にかかれないが、屋根がついている大規模な「チョー」もあれば、パラソルだけがたくさん寄せ集まって、日陰を作り、その下に「チョー」を形成している小ぶりなものもある。

「チョー」は、外国資本のスーパーなどと比べると、ゴミなどがその辺に散乱しているのでずっと汚いのであるが、「チョー」を利用する人々は、そもそもゴミなどを余り気にしていないようだ。むしろ、ベトナムでは「やや汚い、やや不恰好」なのがデフォルトなので、小綺麗に片付きよくデザインされた所の方が、「あれ、なんだここ、やたらと綺麗だぞ」と違和感を覚える。

中規模以上のサイズの「チョー」には、なぜか「床屋さん」が付いている所が多い。「チョー」で買い物をするついでに、洗髪してもらったり、散髪してもらったりもするのだろう。人が集まる「チョー」なので、ここに床屋を構えるのもうなずける。



近年では、南部ホーチミンの有名な「ベン・タン市場」、ベトナム中部の世界遺産ホイアンの「ホイアン市場」などは、すっかり外国人向けのぼったくり価格になっており、地元の価格を知る人はほとんど寄り付かなくなっているが、そうした市場でも、かつてのローカル市場の様子だけ垣間見に行くことはできる。
外国人向けの価格となったローカル市場では、買い物をするのは酷いぼったくり価格なのでオススメはできないが、市場の雰囲気を感じるだけであれば、一見の価値はあるだろう。
「チョー」好き?
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